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序
遠くで何かが大きく爆発する音が聞こえた。
隔壁によって今はまだ無事なこの場所も、いずれは炎に包まれてしまうだろう。
戻ることは出来ない。
選んだこの道は、もう後戻り出来ないのだと分かっていたはずだった。
ただ最愛の人を巻き込んでしまったことが、唯一の心残りで堪らない。だが彼も共に行かねば、矛盾が生まれてしまう。
気付かれては駄目なのだ。
蒼い焔に。
こうやって何度、繰り返しただろう。
貴方と心穏やかな暮らしを取り戻したくて、何度、何度、繰り返しただろう。
──必ず、会える。
──会えたら俺は、真っ先にお前のことを思い出すだろう。
──お前のその綺麗な群青の目を、忘れるはずがない。
そう言ってくれた彼と深淵へと落ちるのが、いつもの展開だったというのに。
彼が呑まれた。
蒼い焔に。
思わず彼の手を引いて、唇を奪いながら深淵へと落ちた。
焔はやがて自分にも広がっていく。
蒼い焔を抱えたまま、やがて自我すら薄くなって。
今までにない出来事に、どうなってしまうのか分からないまま、ただひたすら願った。
今度こそ……どうか今度こそ、彼と。
幸せに生きることが、出来ますように、と……──。
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