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主の誕生日プレゼント6
「アンドレア様、少しだけお待ちください」
顔を俯かせて口を開いた私を、アンドレア様は両腕でぎゅっと抱きしめる。
「ずっと待ちぼうけを食らってる俺に、そんなつれないことを言うなんて、カールは酷い男だな」
「私もアンドレア様がほしいんですっ!」
アンドレア様の突然の来訪に、心の準備ができなかったことと、頭の中が沸騰するセリフばかり言われたせいで、とんでもないことを口走ってしまった。
「俺がほしいだと? それはあれか、俺のナカにおまえのを挿れたいということなのか?」
「ああぁあ、えぇえっと…つまりそんな感じですぅ」
アンドレア様の胸の中に抱かれているため、顔を突き合わせていない現状ゆえに、大胆な返事ができた。
「ふむ、男同士だとこういう問題が起こってしまうのか。厄介だな」
(ひえ~、このあと私は、どうなってしまうのでしょうか。畏れ多くて、アンドレア様とこんな関係になる妄想すら、したことがなかったのに!)
「カール、顔をあげて、俺を蔑む目で見つめてくれ」
「え?」
顔をあげろと言われたので、とりあえずやってみせたが、その後に指示されたことが謎めいているせいで、実行できずに小首を傾げた。
「今日はおまえの誕生日だからな、言うことをきいてやるって話だ」
「はあ?」
「俺がやられ役に徹するために、多少の興奮材料が必要でな。それにはおまえからの冷たい視線や罵倒が、絶対に不可欠なんだよ」
「アンドレア様の仰ってる意味がわかりません」
小首を傾げたまま、アクセントのない早口でまくし立てた。
「またまた~、わかってるクセに。だからそんな軽蔑を滲ませた目で、俺を見てるんだろう? ぞくぞくするぞ」
「…………」
「常日頃カールに叱責されるたびに、心と躰にぎゅんっとクるものがあってな。それで――」
夢見心地に語られる内容は、盛りあがった私の気持ちに、冷や水を浴びせるものばかり。
(伯爵様、大変申し訳ございません。アンドレア様の性癖が、私のせいで歪んだものになってしまわれましたぁ)
ショックで茫然自失状態の私を相手に、興奮しっぱなしのアンドレア様が、きちんとやられ役を全うできたのかどうか。そしてその後、どうなったのか。
皆様のご想像におまかせいたします。
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