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この世で一番ほしいプレゼント♡‬番外編 運命の人2

(どうせコイツも、俺の仕掛けるいたずらに困って、さっさと逃げ出すに違いない)  不機嫌をそのままに、カールを見上げていたら。 「私の下まつげが長いのは、父譲りなんです」 「おまえの父親と同じなのか……」  てっきり母親に似ているのだと思っていただけに、意外な返答に目を瞬かせた。 「あのさ、おまえ――」 「カールとお呼びください、アンドレア様」 「カール、俺の部屋に案内してやる」  辞めていった家庭教師たちと同じように、親しげに接するカールと生活を共にした。  はじめて逢ったときに感じた、胸の疼きの理由がわからないまま、たくさん困らせることをカールにする。隙を見て勉強を投げ出すのはデフォルトで、かくれんぼをしたときは、屋敷にある一番背の高い木に登ってやった。  使用人たちが怖気付く中、カールは命綱をつけて俺を捕獲し、無事に地面にたどり着くや否や、腰を抜かしたんだ。 「おい、どうした?」 「高所恐怖症を思い出したら、力が抜けてしまいました……」  下まつげを涙で濡らし、今にも号泣しそうな雰囲気を醸すカールに、ものすごい罪悪感を覚えた。  コイツを泣かすことをしてはいけない――そう心の中でインプットしてからは、手の込んだいたずらをやめた。  そこから、いい関係を築くことができたおかげで、カールが来てから5年の月日が流れた。この頃あたりから、パーティでよく女のコに声をかけられるようになった。  だけど、どいつも同じようなメイクとドレスゆえに、名前を覚えることができず、カールの耳打ちがないと、対処できなかった。  父上には爵位と名前くらい、ひと目で覚えるように強く言われていたものの、バカなので当然覚えられなかったのである。 「アンドレア様、大丈夫です。お逢いした方すべてを覚えようとすれば、誰だって記憶の容量がオーバーします。ですから、本日話しかけられた方数人から覚えてみてはいかがでしょう?」  父上のように頭ごなしに叱るのではなく、優しく諭してくれるカールは、俺にとってなくてはならない存在だった。  そして胸の疼きについても、カールが傍にいるだけでドキドキしたり、ほかの奴と喋っていたりするだけで嫉妬してしまうことで、それが恋心なのがわかった。  カールに恋して、ヤキモキしているのは自分だけ――そう思っていたある日。したくない見合いをセッテングされた。場所は庭先で、母方の親戚をまじえお茶を嗜む。  傍に控えるカールのまなざしに、表現できない陰りみたいなものがあって、妙に気になってしまった。

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