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君がいい。君しかいらない。(おまけ)
◇
沢田と話をした後、無性に神井に会いたくなって彼の家に行くことにした。教室であんなことをした後に沢田に見られていたことを告げられ、神井を怒鳴り散らし、今朝だってろくに会話をしなかったことを後悔したから。
見られてしまったのは神井の誘いに乗った俺だって悪かったし、神井だけを責めるべきではない。それに沢田と話をしたら、改めて神井のことを特別に思えた。
「類……」
「……怒ってごめんなさい」
ドアを開けてくれた神井に、真っ先に謝った。許してくれるだろうか? と悩んでいたのに、神井は全く怒っていないようでケラケラと笑い出した。
そうして俺を玄関の中に引き入れると「触るの、昨日振り」と言ってぎゅうっと抱きしめてきた。
「神井? どうしたの? 怒ってないの?」
「怒る? さっきのあの話を聞いていて誰が怒ると思う?」
「……さっき? は? 聞いてたの?」
盗み聞きをするなんて最悪だ! と怒鳴ると、「先に帰っててって言って俺が素直に帰ると思う方がバカだろ」と開き直られた。沢田に見られたことに対して焦りも興味もなくてどうでもよさそうだったから、先に帰ると思っていたのに。聞かれたら恥ずかしいことをたくさん言ってしまったじゃあないか。
「俺がお前に言ったことを沢田にも言ってたな?」
「……っ」
「俺たちの関係を否定しなかったのは嬉しかったよ。すげぇ緊張してたの伝わってきたけど」
「黙れ!」
「やーだね。だって俺、今すげぇ嬉しいの」
神井が嬉しいとかそういうことは今どうだっていい。俺はたまらなく恥ずかしい。消えてなくなりたいくらいだ。
「類、キスしていい? 触ってもいい?」
「ダメだって、ここ玄関!」
「玄関じゃなければいい? 俺の部屋行こう」
「行かない! もう帰る!」
「……ふぅん、そうやって怒って帰ったら、家に着いてからまた俺のこと思い出して会いたくなると思うぜ」
「……ならない!」
俺を抱きしめたまま、甘い声でそう囁いた。きゅうっとなった心が、このまま抱きしめ返してしまえと言ってくるけれど、そうしてしまっては負けだと、必死に耐える。
「俺は類がこのまま帰るのは寂しいけどなぁ」
「そうやって甘えたこと言うから、だからあの時も教室で我慢できなくなって、」
「なぁ、類、せっかく来てくれたのは、俺に会いたくなったからだろ?」
「……っ、」
神井が俺の頭をぽんぽんと触った。……大好きな頭ぽんぽんをこのタイミングでするのはどうなのか。わざとなの? それともこれはいつも無意識でやってる?
「類……、触りたいなぁ」
「……うぅ、」
「類くん、触らせて。我慢できねぇって……」
背中に回されていた手に力が入れられ、拒否は許さないとでも言うように、わざとリップ音を強く立てて耳にキスをされる。頭ぽんぽんにキスに、体がそわそわし始めた。負けてしまってもいいじゃあないかって、そっちに思いが傾いていく。
「……っばか!」
「好き。触りたい」
「もう! 神井のばか! お、俺も好きだもん……」
もうどうでもよくなって、神井に思いっきり抱きついた。俺だって神井に触りたい。こんなふうにずっと触れたいと言われれば、それを拒否することはできないのだ。
「でも、学校ではなしだからな」
「どうだろう。類に触りたくなったら無理だなぁ……」
「我慢する気ないだろ」
「うん」
「……はぁ、」
END
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