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触れられる理由をちょうだい①(8)
「出会い方は最悪だったよねーあははーって笑える関係になった方が今後のことを考えるといいのでは? ってことですよ。言ってること滅茶苦茶ですけど、ああいうことをした仲なわけですし、きっと仲良くなれると思わない?」
鞄の中から昨日買ったガムのボトルを取り出して、男性の前に差し出すとためらうことなくこれにも手を伸ばした。つくづく助けたのが俺で良かったと思ってしまう。
「助けてもらった側だから偉そうなこと言えないけれど、何でその……そういう話しをする時とか、ああいうことしてる時だけタメ口でちょっと上からなの……? 慣れてるから余裕ってこと? 何かの作戦?」
「何かの作戦って、何の? むしろ俺が聞きたい」
「うっ……、君も弱みを見せてくれるのなら、そういう関係も有りかなぁ……。俺だけこんな醜態晒してしまって、それで友人ってのは何か嫌だ」
そんなことを言われても、教えられる弱みは何もない。と言うか、そもそも弱みって教えるものではないだろう。
「友人になってから、俺の弱みを自分で探したらいいんじゃあないですか? それともまたトイレに戻る? 俺のも見せた方がいいの?」
「……っ、いい! そういうことではないからっ、み、見せないで」
目をぎゅうっと瞑って、顔の前で手を振って拒否を見せるその男性に思わず笑みがこぼれた。この人は一体何なんだ。色々と面白すぎだろう。ほっとけなくなるし、からかいたくなる。
「……で、どうするんですか? 友人になるの? ならないの?」
「き、君は、俺と友人になりたいの?」
「へぇ、そうやって俺に聞くんだ。提案してるのは俺の方なのに?」
「だって、友人になって何をするのかなぁって……」
そう言うと男性は足に乗せている鞄を覆うように丸まった。少しだけムスッとした顔をしている。突き出された下唇に笑ってしまった。
「それは俺も知らないですよ。こんな年上の友人なんかいないし」
「こんな年上って……! 俺はまだ三十だ。君とそんなに変わらない……」
「俺は二十歳なんで十歳差ですね。けっこう変わりますよ。俺が生まれた時あんたは小学……」
「っもういい、もうやめて。差はけっこうありました。ごめんなさい」
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