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触れられる理由をちょうだい②(2)
麦嶋さんを知れば知るほど放っておけなくなり、早く学校へ行かなくて良い日でさえも朝早い電車に乗ってしまいそうになる程で、でもそれは何だか自分が気持ち悪くてできないでいる。
せっかく大学にも慣れ去年よりも楽しくなってきたというのに俺は、学校の友人や可愛い女の子よりもこの人を優先してしまうのだ。
段々と懐いてくれる麦嶋さんを見ていると、もっと気を許してもっと甘えてほしいとの欲が出てくる。おかしな出会い方をして他の人よりも特別だと思っているからなのか。
「佳吾くんは、どの魚が好き?」
「クマノミ。麦嶋さんは?」
「クラゲ」
「えっ、クラゲ……? ふはっ、そうなんだ。じゃあまずクラゲ見に行きます?」
そう言って麦嶋さんに手を伸ばすと、その手を何の躊躇いもなく握り返される。そのまま数歩進んだところで、ハッとして麦嶋さんの手を離した。
「ごめん。麦嶋さんが子どもっぽいから、つい弟の手を引くような感じで……」
思わず手を伸ばした理由にそんな嘘をついた。弟なんかいたことはないし、小さい子どもの手を引いてあげた記憶もない。
「……反射的に繋いでしまった。こちらこそごめんね」
子どもっぽい発言には何の反応も見せずに、麦嶋さんはさっき繋いでいた手を背中へと回した。少しの間沈黙が続き、麦嶋さんは傷ついたような顔をしている。
俺が手を離したせいだろうか?
いや、だっておかしいじゃあないか。俺がうっかり手を伸ばしてしまったにしろ、麦嶋さんが反射的に手を伸ばしてしまったにしろ、このまま繋いでおくわけにはいかない。
別に麦嶋さんを拒否したわけでもないのに、どうしてそんな顔をするのだろう。
……手を繋いだままでいたかったってこと?
「麦嶋さん……」
「あっ、あそこの魚きれいだね」
もう一度伸ばした手はやんわりと拒否され、麦嶋さんは少し先の水槽へと走って行ってしまった。
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