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触れられる理由をちょうだい②(8)

「あんたに触れたくてたまらない。滅茶苦茶にしてやりたい」  どうせ自覚してしまったのなら、友人は続けられない。この衝動の抑え方も分からない。  出会った時は非日常的だっただけで、今はこの人を自分のものにしなければ触れられないのなら、叶うことのないそれを願うよりも一度だけ、この手でぐちゃぐちゃにしてさよならした方がマシだ。  麦嶋さんのことを想うのなら今すぐにやめて、許されなくても謝るべき行為で、けれどもう、この想いは引き返せないところまで来てしまっているらしい。俺の理性は俺を止めてくれない。 「嫌だ……、佳吾くん、頼むよ、」  ボロボロと涙を流しながら、力なく麦嶋さんが声を漏らす。 「そう言ってるけれど、あんたのちんこ反応してるじゃん。前に俺に触れられた時のこと、思い出した? あの時気持ち良さそうだったもんね」 「……やめ、」 「俺の手、覚えてる? 直接触ってほしいでしょ?」  変わらずに左手で彼の手を固定したまま、右手でズボンを下げた。パンツをズラし、久しぶりに見た彼のペニスにあの時のように触れた。 「んっ、嫌だ、嫌、ぁ……っ」  感じている声は出してくれるのに、「嫌だ」をやめてくれない。  力ない抵抗を見せながら何度もその言葉を口にする。あの時だって無理矢理してもそんなことは言わなかったのに。 「嫌じゃあないでしょ? ちゃんと勃ってるじゃん」 「嫌だ、嫌っ」  その言葉を聞きたくないと強引に口付けると、麦嶋さんの体の震えが大きくなった。奥へと逃げる彼の舌を追いつめて苛めれば、完全に抵抗する力を失ったのか動かなくなった。  小さな口は俺の舌と唾液でいっぱいになり、それにむせて咳き込むも、酸素を吸うことを許さないとでも言うようにまたその口を塞ぐ。  涙やら唾液やら鼻水やらでぐちゃぐちゃになった麦嶋さんに、隠せない程の痛みが心に刺さるけれど、それでも止めることはできなくて。  ただ、こうまでして感情を押しつけたところで俺の気持ちが無くなるわけでも何か良い方向に変わるわけでもないと自覚した冷静さが、虚しさを大きくする。

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