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微笑む顔の下で(11)

 誰かが言っていた、「いくら中身が素敵だとしても、見た目が良くないとどんな人か知りたいと思ってもらえない」という言葉は必ずしもそうではないけれど、和には言えることだと思った。  初めから皆が見た目で判断しなければ和だって心を開くだろうし、そうすれば和が威嚇するようなあの態度をクラスメートにとることもなかったかもしれない。スースーと静かな吐息を立てて眠る和を見ることができるのも俺だけじゃあなかったかもしれない。  けれど校則をきちんと守っていれば良い話なわけで、いくら人を見た目で判断してはいけないと言っていても、和にだって非がある。 「バカだね」  それなりにしていれば良かったのに。そうしたら「普通」の転校生としてこのクラスに馴染めたかもしれない。  俺に操作される側の人間だと決めつけられることも、勝手に俺の気に障る対象として扱われることもなかった。遊びの標的にされることも、そして変な独占的に付き合わされることもなかった。 「可哀想に」  何となく皆に嫌われて、俺だけに懐いているなんて、俺はそのレベルの好意はいらない。  目的は変わったけれどやることは変わっていないのだから、俺はやりたかったことを実行するよ。それを知った時、きっと君は許してくれないだろうけれど、でもそんな心配はいらない。  バレるはずがないのだ。誰も俺を疑わない。だって俺がそうする動機を見いだせないから。 「次はどんな顔を俺に見せてくれる?」  泣いて喚いて、涙やら鼻水やらでぐちゃぐちゃになった顔? 徹しかいないと必死になっている顔? 「おやすみ和。今のうちにゆっくり休みな」

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