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花火が終わる、その時には。(4)

 彼に触れることを、これまで何度も想像してきた。肌は白く、しっとりと吸い付くような感触で、優しくキスを落とせば可愛らしい声を漏らして。そうして想像してきたのとは全く違うこの状況に涙が溢れた。  こんなに無理矢理……。俺だって忘れられない。 「真純」 「んだよ、」 「好きだよ……、好き」 「……どうして今、そんなことを言うんだよ」 「こんなことしなくたって、俺は、お前のことを忘れられない。……忘れないよ。だから、やめて、」 「あまりにも勝手すぎないか? 俺だってお前が好きで、忘れられないよ」  周りが恋人の話題で盛り上がる度に遠くにいるお互いの顔を思い浮かべては寂しい気持ちに支配されるかもしれない。相手が悩んで苦しいときもそばにいられない自分を無力に思えるかもしれない。少しのことで不安になって相手を疑う自分が嫌になるかもしれない。誰にも言えない秘密の関係に疲れてしまうかもしれない。  それでも俺は。 「なぁ、」  千鶴とならその壁に立ち向かっていけると思っていたよ。 「……どうしても駄目なのか?」  千鶴はそうじゃあなかった?  ぽろぽろと溢れる涙が千鶴の頬に落ち、彼の涙と芝生へと流れ消えていった。  一緒になった涙の行く先が、まるで彼の言うこれからの俺たちを表しているようでまた胸が痛くなった。  お互いの泣く声が完全に聞こえなくなるくらいに花火の音が大きくなる。一気に空に弾けていくその音にもうすぐ終わってしまうと分かった。  この花火が終わる、その時には。 「千鶴……」  どうか、この気持ちが消えていますように。そんな叶っても叶わなくても悲しい願いを込めて、千鶴の唇へ触れた。 END

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