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花火が終わる、その時には。(3)

「お前の、そういう考えのせいだったんだな」 「……っ、」  俺のことを信用してくれていないから。まるで好きの気持ちが大きいのは自分だけで、俺は何かあればすぐ心変わりをすると思われている。 「お互い好きなのに、俺の気持ちがどれ程かなんて分かってもらえずに結ばれないってことか」 「……っ、」 「何が最後だよ。結局お前だってその程度の気持ちなんだろう? いいぜ。だったらお望み通り、最後にしてやる」 「……あ、」  彼の後ろの髪を掬い上げ、見えたうなじに思いっきり噛みついた。身をよじり逃げようとする千鶴を芝生へと押さえつけその上に跨がる。  力では俺に絶対勝てない彼は、これからされるであろうことに怯えているようだった。 「千鶴のこと、好きだなぁって、大切だなぁって、そんな優しい気持ちで触れたかった」 「真純(ますみ)っ」 「でも、今は滅茶苦茶にしてやりたい。俺のこと忘れられなくなればいい。遠くに行ってもずっとずっと覚えたままで苦しめばいい。あの時にどうして、最後だなんて言ってしまったんだろうって、後悔すればいいんだ」 初めてのキスは、苦しくて悲しい味だった。俺の下で声をあげて泣く千鶴に構うことなく、お祭りの始めに似合っているよと褒めた浴衣を強引に脱がしていく。 「どんな最後を想像してた? 言ってみろよ」 「やめっ……」 「花火を見るために、こんな人のいないところに連れてきて、少しは期待していたんじゃあないの?」 「ちがっ、」 「そう言う割に身体は反応してるけど」  浴衣越しに触れれば、千鶴は、俺の都合の良いように反応してしまう身体に項垂れる。口元を押さえるも甘い声は漏れ、細い身体の線をなぞれば気持ち良さそうに腰が浮く。  それでも相変わらずぼろぼろと泣き続け、俺の中で罪悪感だけが膨らんでいく。

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