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9.「キス」1/2*俊輔 ※

「――――…」    不思議そうに見ている真奈に気付き、オレは立ち上がった。  おそらく無意識なのだろうが、びく、と震える真奈に、苛立つ。  ……それが仕方のないことだと、分かっているのに。  近づいて、顎に手をかけて上向かせると、キスを仕掛ける。  瞳を閉じて小さく喘ぐ真奈の声に、余計に煽られる。  ぐったりして眠っていた真奈を思い出すと、控えた方がいいだろうと思いながらも。何だか、収まりがつかなかった。 「……っん……ッ……」  ――――……キス、という行為が、あまり好きじゃなかった。  求められているのが分かっていても、応じない事も多々あった。  キスなんかしなくても、いくらでもこんな類の行為は出来る。  なのに。  真奈とするキスは――――……なんだか、違って。  どうしても。収まりが、付かなくなっていって。 「……っん、ぅ……」  くぐもったように漏れる声が、甘えてるみたいに、聞こえる。  苦しそうに、眉を顰めるのも、その内、トロンとして、一生懸命応えてくるのも。  ……それが見たいから、真奈にキスするのは、嫌じゃない、らしい。 「……っ」  唇の間で、はあ、と息が零れる。  それに惹かれるように、深く深く――――……。  ぎゅ、と背中に手が回ってきて、しがみつかれると、ますます離せなくなる。  より深く口付けて、舌を絡め取る。ゆっくりとその舌を甘噛みしてやると、真奈が、ん、と声を漏らした。 「……しゅ……すけ」    呼んでいる意識もなさそうな感じで、縋るように名を呼ばれると。  瞬間的に、熱くなる。……さっきまであんなに、抱いてたのに。  セックスなんて、慣れた行為で。  ――――……我を忘れて、なんて、ありえなかったのに。  余裕なく、真奈の身体を壁に押さえつけると、舌を絡めさせたまま、身体に手を這わせて撫で上げた。真奈がくぐもった声を上げ、身体をびくんと震わせる。  その仕草が何だか――――……可愛いような気が、して。そんな自分に、戸惑う。  薄い胸に手を這わせる。柔らかな膨らみがある訳ではないけれど、白い肌が手に吸い付くようで、そのままゆっくりと撫でる。  手触りの良い、肌。  ……初めて触れた時も、そう思った。 「……ん、ん……っ」  喘ぎに抗議が混ざってる気がする。――――……またすんのかと、思ってるんだろうな……。  少し笑ってしまうと、どんな意味で取ったんだか、真奈が焦って制止を始める。 「――――……今日は、も、やめ……無理……」  分かってる。さっき落ちた時だって、限界ぽかった。 「――――……オレは その気なんだけど?」  なんでこういう言葉しか、出ないのか。   「……無理……」  小さく首を振ってる姿に。  ――――……何でオレは、余計煽られるのか。  ただ、「無理」と言った真奈の言葉に、最後までやるのはさすがにまずいだろうと何とか自制しようと努める。それでもなかなか収まらない。 「……何をすれば、オレが許してやるか分かってるだろ?」  真奈の唇をなぞって、そう言うと。  真奈は、少し唇を噛んだ。……真奈はその意味を、もう、分かってる。  そういう風に、この二か月、過ごしてきた。

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