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11.「お揃い?」*真奈

 その時、ふと、俊輔の手の中のモノに目が留まった。 「……ふたつ、あるの?」  そう聞くと。 「セットで売ってた」  短くそう答えて、俊輔はオレから視線を外した。 「ふうん。じゃあ、お揃いなんだ?」  何にも考えずに言った途端。  顔を上げた俊輔にマジマジと見つめられた。 「え。……何……?」  オレ今、何か変な事、言った?  あ。――――……言ったかも……。お揃いなんて、俊輔の柄じゃない気がする……。  思わず漏れた失言に、内心うろたえていると。 「ペアで何かを持った事、あるか?」 「え? あ。…… 無い、かな」   「――――……オレも、ねえな」  ……ああ。うん。やっぱりそうなんだ、と思う。  明らかにそういうの、面倒臭いって言いそう……。  俊輔が誰かとペアルックとか着てたら…… この世の終わりが来そうな気すら、してしまう。  自分でも妙な事を考えながら、何だかしみじみ納得していると。  俊輔は黙ったまま、そのバングルに視線を落とした。  何となく、聞きたくなって。 「――――……それ、どうするの?」  聞くと、俊輔が、ふと顔をあげてオレを見つめた。 「……あ? なんだ?」 「俊輔は、しないの?」 「―――――……お前、オレとペアにしたいのか?」 「……」  その物言い。  ……目をパチパチさせてしまいながら。オレは眉を顰めた。  何だろう、その言い方。  ……オレが嫌がるから、しない、みたいな。 「……別に……一個くらい、同じ物持ってても良いような気も……」 「―――――……」 「……デザインが気に入ったから買ったんじゃないの?」  黙った俊輔に戸惑いつつも、そう言うと。  俊輔は、片手で前髪を掻き上げて。 そして、ふ、と唇を歪めた。  ――――……何だろう、その笑い方。  ますますオレが眉を顰めてしまった瞬間。  首の下あたりに、ぐい、と手が掛かって、ぽふ、と、背中をベッドに沈められた。 「な――――……」 「……寝ろよ」  座ったままの俊輔に見下ろされて、唖然としつつも。  この体勢は、しばし忘れていた、葛藤を思い出させるに十分。  そうだ、もう、今日は寝た方がいいや。  無言で頷いたオレが、布団をたぐり寄せて、肩まで持ち上げると。  俊輔は、オレに背を向けて、立ち上がった。  俊輔の姿が見えなくなってから。もう一度布団に入り直して。  ……そっと、目を閉じた。    憎めたら、楽だって、思ってきた。  意味の分からない、変態だって、ただそう思って、嫌えたら。  すごく、楽だと、思ってるのに。  俊輔の不可解な言動が、たまに、何でだか、胸が締め付けられそうに苦しかったりして。  意味が全然分からない。  薬を使われずに抱かれて、感覚と記憶が正常に戻って。  強くなったのが、嫌悪じゃなくて、羞恥心と快感だなんて。  絶対、おかしい。  ――――……まるで初めて抱かれるみたいな感覚が、怖かった。  ただでさえ、全てを浚われそうだったのに。  気持ちまで、自分の予想できない所へ持って行かれてしまいそうで。  なんだか、本当に、どう考えたらいいのか分からなくて。    本当に困る。  

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