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8.「皆いろいろ」*真奈

オレは、アイスをちまちま食べながら、目の前に並んで座ってる俊輔と凌馬さんを見つめていた。  凌馬さんが来てくれて、さっきまでの静かで気まずすぎる空気は一蹴された。もう、凌馬さん、神さまに見えてきている。  俊輔も、凌馬さんが来てから、普通に話すし、笑ったりもするし。  ……俊輔だって、オレと居るの、絶対気まずいんだろうなと、確信中。  話すのも微妙なオレを、どうしてここに置いておきたいのかなあと、なんだか不思議に思ってしまう。だってなんか、凌馬さんとはすごく楽しそうだし。  普通に、笑うんだなあ。……ふーん。さっき、オレに見せた笑顔は、すごく貴重過ぎて、驚いたけど。……オレに対してじゃなければ、こんな感じなんだ。ふーん……。なんて思っていたら、凌馬さんが、ふっとオレを見つめた。 「真奈ちゃん、ちゃんといろいろ食べろよ?」 「あ、はい」  うんうん、と頷いていると、「すげー軽くて驚いたし」と言う凌馬さん。 「軽くて驚いたってなんだよ?」 「抱き上げた時」 「は? いつ」 「…………」  凌馬さんは、ものすごく嫌そうに固まって、ため息をついた。 「こないだに決まってんだろ。道で倒れてるとこ、運んだのオレだし」 「ああ、それか……」  ふうん的な返事をした俊輔に、大きなため息をついて、凌馬さんはオレと視線を合わせた。 「自分がひでーことして逃げられたくせにな? そのくせ、オレが抱き上げたっつったら嫉妬かよ」 「は? ちげーし。バカなのか、お前」 「バカはお前だっつーの。な? 真奈ちゃん?」 「真奈ちゃん言うな」  そのセリフに、更に嫌そうな凌馬さんは、一度俊輔を見た後、もう一度オレを見つめて。 「真奈って呼んでいい?」 「あ、別になんでも」  言いかけた時、俊輔がまた隣から。 「ふざけんな。勝手に呼び捨てんな」 「つかお前ほんといい加減にしろよ、じゃあなんて呼べっつーんだよ」 「……」  ち、と舌打ちの俊輔。 「……なんな訳お前、ほんとに俊輔か? 大丈夫か? 酔って本音出まくりなの?」 「……黙れ」 「……はー。真奈ちゃん、多分分かんないと思うけど……これ相当ヤバいからね。ていうか、真奈ちゃんでいいんだろ、呼び捨てよりは」  俊輔は何も言わないので、「じゃあ真奈ちゃんで」と、凌馬さんがオレに笑う。凌馬さんと俊輔とのやり取りは意味不明だけれど、とりあえず、ちゃん付で呼ばれるのは決まったみたいなので、頷く。 「珍しいな、お前が酔うの。何飲んだんだ?」 「……和義がもって来た日本酒」 「そんな強いやつ飲んだのか? つかお前が酔ってんの、初めて見るかも」  クックッと笑って、凌馬さんが俊輔を面白そうに見つめる。  オレがアイスを食べてる間、凌馬さんと俊輔は、あれこれ族の話とか、誰か知り合いの話とか、楽しそうにしていた。そこに西条さんが、凌馬さんの食事を運んでくる。 「和義さん、ありがとうございます」 「いえいえ。凌馬さん、来られるの久しぶりですよね」 「……多分、真奈ちゃん連れ込んでから、呼べなかったんじゃないですかね」 「あ、そういうことですか」  なるほど、と西条さんが笑いながら凌馬さんに頷いて、凌馬さんもクスクス笑っていて。俊輔は、無言でお茶を飲んでいる。  ……てことは、前は来てたんだ。なるほど……。  あたりまえだけど、オレがここに来る前の俊輔がどうやって生きてたか、オレ、何も知らないんだよね……。凌馬さんや族の人達と仲良いのは分かるけど。今大学で、俊輔は友達と普通に居るのかな。って当たり前か……なんかオレにとっての俊輔が特殊すぎて、普通に友達と居る俊輔とかが、浮かばない……。 「和義さん、俊輔に何飲ませたんですか?」 「……ほんの少し強い、日本酒ですよ?」 「ふうん……俊輔、今までも結構強い酒飲んでても、全然酔ったとこ見たことないんですけど。ほんの少し、ですか?」 「はい。ほんの少し」  二人ともちょっぴり笑顔で、にっこりしあっているけれど。  ……何だかやりとりがちょっと怖いけど、入らないことにした。  ……とりあえず俊輔の周りに居る人達は、なんだかんだで、色々迫力があるというか……。  梨花もだけど。皆、ちょっと怖い……。

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