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12.「分からない」*真奈

「真奈……」  静かな声で呼ばれて目が覚める。  声のした方を見ると、俊輔がもうすっかり身支度を整えて、ベッドの端に腰かけていた。 「起きれるか?」 「うん……おはよ」  朝、俊輔に起こされるのが、初めてかもしれない。  いつも、目が覚めると、俊輔は居なかったから。 「真奈」 「……うん?」  体を起こして、俊輔を見つめる。  ……昨日、オレだけイかせて、何もしないで寝ちゃったんだよね。  何がしたいんだろう……ほんとに。 「起きてるか?」  ぼうっとしたオレに、ふ、と少しだけ笑った俊輔に、なんだか焦って、「ぁ、うん」と頷くと。また額に手が置かれる。 「……熱は、無いな」  何だかホッとしたように息を吐く。 「真奈、今日、和義と一緒に自分のマンションに行って必要なもの、全部持ってこい」 「……必要なもの?」 「大学に通うのに必要なもの、全部。服とかも、着なれてるものとか、とにかく全部、持って来いよ?」 「――――……大学……?」  俊輔の顔をマジマジと見つめてしまう。 「診てもらってる医者に、診断書作って貰った。それを持って、和義に大学に行かせて……まあ、色々とさせたから。各教授、レポートの提出とか色々条件つきのもあったが、それをすれば、今度の学期末の試験さえ受かれば、休んでた分はチャラにできる」 「……そんなこと、出来るの……?」 「詳しいことは言わねえけど。できる、とだけ言っとく。初授業の時、その条件は、自分で教授に聞きに行けよ」 「……うん……」 「通うのは体調戻り次第で良いけど、車で和義と行って、荷物をこっちに運び込んどけ。オレの部屋の本棚、空けるように和義に言ってあるから、持ってきた量に応じて自由に入れていい」 「――――……ん」  何だかついていけなくて、ただ頷いていると、俊輔がオレの顎に触れて、上向かせた。 「聞いてるか?」 「うん……聞いてる」  見つめ合って頷くと、触れた俊輔の手が離れる。 「体調良くなかったら荷物行くのも、別の日にしろよ」 「……うん」  立ち上がった俊輔が「じゃあな」と言って歩き去ろうとした時、咄嗟に。 「いってらっしゃい」  そう言ったら、俊輔が、ふ、と振り返って、何とも言えない顔をして。 「……あぁ」  そう一言だけ。頷いて、部屋を出て行った。  …………いってらっしゃいって。  ……変、だった??    何だかびっくりした顔を見ていたら、そう思って。  もう一度、ベッドに転がった。  ……えっと……。  ――――……大学、行って良いって。  ……色々したって言ってたけど……何したんだろう……。  あど西条さんに聞いてみよう……。  ……大学、行って良いんだ。  …………それって、自由に外に行って良いってことだよね?  あ。そうか。……自分で戻ってきたからかな。  逃げないって……思ったってことなのかな??  何だか色々良く分かんないけど……。   学校行けるのは、嬉しいけど……。  ……昨夜のことも合わさって、なんだか全然。何がしたくて、オレにどうさせたくて、ここにいさせたいのか。  よく分かんない……。  

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