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41.これから一週間*真奈

41.これから一週間*真奈  それからどうなったかというと。  俊輔の部屋じゃなくて、広い部屋で、大きなテーブルを囲んで三人で食事をすることになってしまったのだった。  オレだけは俊輔の部屋で良いのにと思ったんだけど、なんか、瀬戸さんが一緒でいいよと、強く勧めたらしい。……なぜ?  オレを呼びに来た時の、西条さんは、なんだかとっても、お気の毒に、と思ってるような雰囲気で。オレは、話を聞く前から、一緒に食べることになるんだろうなと、察した。  で、今。すごく重そうな木のテーブルで、オレと俊輔が隣、瀬戸さんが向かいに座ってる。隣と言っても、一メートル位は離れてるけど。西条さんが、前菜を、運んで目の前に置いてくれる。  ……コースみたい……すごくゆっくり食べることになるんだろうかと、かなりうんざりで。もう、流し込むように食べて、課題をやりにいくと、言いたいけど。次の料理がなかなか出て来なそうだ……。 「いただきます」  手を合わせて、前菜を一口。……いつもどおり、おいしい、ここの料理を作ってくれてる人は、おいしくて、すごい。今日も、おいしいんだけど。息がつまりそう。  瀬戸さんは、食事をしながら、目の前に並んでいるオレと俊輔をじっと見てるし。どうしていたらいいのかもう、ほんと……。  この部屋に来るまでの途中て、西条さんが『色々若が答えると思うので、真奈さんは、それに合わせてくれたらいいと思いますよ」と言ってくれて、それを、ただひたすら、信じてるのだけど。 「なあ、真奈くん?」 「はい?」  ……いきなり話しかけられたけど。……泣きたい。 「俊輔の部屋で暮らしてるっていうのは、今俊輔に聞いた。自分の意志だって、俊輔は言ってるけど、本当?」 「…………」  オレは、すぐ、頷いた。  ……少し前は違ったけど、今ここにいるのは、オレが、選んだ、から。  オレが頷くのを見て、ああ、よかった、と瀬戸さんが笑う。よかった?と首を傾げたら、瀬戸さんはクスクス笑い出した。 「意志じゃ無かったら、犯罪かと思うとこだったから」  良い笑顔で言われたセリフに、曖昧に首を振る。  ……帰りたい。俊輔の部屋に。うう。 「知り合って色々あって、今は、真奈も了承して住んでるって言ったろ」  俊輔の言葉に、瀬戸さんは、まあそれはよかった、と笑う。 「ここから大学も通ってるの?」 「はい」  余計なことは言わないように。即答してく。 「家族は?」 「母が亡くなって、一人暮らしだったので」 「真奈くんて、ベータだよね?」 「あ、はい」  ……来た。……オメガじゃないか確認されたんだよな。  まあ、絶対違うのは見た感じで分かると思うから、これは良かったかな。  変な関係だとは思われなくて、済むかも。   「色々あってって、何?」  瀬戸さんは、その質問を俊輔に向けた。俊輔は瀬戸さんを見つめ返して「それは本当に色々だから、言わない」とバッサリ。答える気は無いみたい。 「ふうん……?」  面白そうに笑った瀬戸さんは、オレに視線を戻してきて、じっと見つめてくる。 「何があった、っていうのも知りたいけど、それよりもさ。俊輔が、誰かを自分の部屋に置いてるっていうのが……ちょっと信じがたいんだよね」 「――……」 「そういうの、絶対嫌な奴だから。オレ、お前は、結婚しても絶対別々に寝るタイプだと思ってたし」  ……どんなタイプ……。なんか一瞬、可笑しく思えたけど。  とても、笑える雰囲気ではなかった。  早くここから、出たい……と思った瞬間。  瀬戸さんが、ぱっと俊輔に視線を向けた。 「あ、そうだ。俊輔。一週間、泊めてもらっていい?」 「は? 何で」  俊輔の声は明らかに嫌そうで。食事を置いてくれていた西条さんも、ちらっと瀬戸さんを見たし。で、オレは、なんだか何も考えられなってる。 「今、マンションの隣で工事しててさ、一週間ちょい、かかるそうなんだけど、うるさくてさ。工事が終わったら、すぐ帰るから」 「塾に近いホテルとかに泊まればいいだろ」 「こんな機会ないんだし、一週間くらい、いとこ同士、仲良くやるのもいいだろ?」 「――――……」 「たまには酒なんかも飲みたいし」  俊輔が眉を顰めた感じで、でもそれ以上何も言わないし、西条さんも、普通の顔で、配膳を始めたし。  ……これは、決まったんだろうなぁ。と、ぼんやりと考える。  良く分かんないけど。仲は、悪くはなさそうだし。結構俊輔のこと、分かってそうな感じはする人だし。絶対帰れ、と言わないんだから、そういうことだよね。  ……まあ、オレは来週もきっと、レポートやってるし。  関係ないかな、と。思いながら。  でもなんとなく。  ……俊輔とオレの、出会い方とか、そういうのを、何も言ってはいないので、知られない方がいいんだよなあと思うと。  ちょっと憂鬱になってしまう。だって、この人。  ……なんか、頭良さそうで。勘が鋭そうで。怖いし。  よく分かんないけど。とにかく、頑張るしかない。    そもそも今の関係だけなら……ただの居候……? だしなぁ。知られて困ることは、ないのかな。と思い、つい首を傾げてしまう。   (2024/9/6)

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