149 / 149
13.久しぶりの*真奈
すごく、久しぶりに皆とご飯を食べに来た。
オレの好きなものでいいって言われたけど、結局十人になったから居酒屋に行くことが決まった。
店が決まった時に俊輔に連絡を入れたけど、普通に分かった、と言った。
「酒はまだやめとけよ」と「帰る三十分前には和義に連絡しろ」とは、言われたけど。
分かったって答えてたら、俊輔も出かけるから遅くなるって言ってた。
――俊輔が遅くなるなら、オレも、そんなに時間、気にしないでいられるかな。
家で待ってると思ったら、早く帰らなきゃって感じだったけど……。
「カンパーイ!」
何度目の乾杯だろ。大学二年、二十歳になって、飲める奴も増えてて、テンション高い。
「真奈は酒、飲んでないの?」
「うん。今日はやめとく。また今度ね」
――もともと俊輔に言われなくても、飲まずに帰ろうって思ってた。
大学に通うのは許してくれたけど……友達とご飯行くのとか、それが飲み屋でもいいって言ってくれるとは思わなかった。ダメって言われるかなと思って、恐る恐る電話した。
オレが逃げないって、信じてるのかな……? どうなんだろう。
いいって言われても、本当に行っていいのか考えてしまったし。
行ったらあとで怒られるんじゃないかなとか。
でも俊輔も出かけてくるっていうなら、もうそれは怒られないかも。
なんか……急に自由になりすぎた気がして。
それって、当たり前のことなのに、気にしてる自分が謎すぎるのも分かっているのに。
……解放感はある。
そうだ、オレ、自由にこういうことしていいんだった。って、思ったりもする。
俊輔がオレのしたいことを尊重してくれてるみたいで、嬉しいなとも思う。
だけど。
――よく分からないのは、それでモヤモヤしてる自分の気持ち。
もう、オレがどうしてても、俊輔はいいのかな。
関係ないのかな。なんて。
浮かんでる。
「――よな?」
ぼーっと考えていたら、急に自分に向かった同意を求める声に、はっと気づく。
「あ、ごめん。今ぼーっとしてた」
「なんだよー飲んでないのに酔った?」
「うん。そうかも。ごめん」
笑いながらそう返すと、皆も笑って、一人がもう一度言ってくれる。
「だから、真奈さ。もう学校辞めちゃうんだろうなって思ってたから。よかったよ、戻ってこれて。課題も出したら、進級もできるんだろ?」
「うん。たぶん」
頷くと、皆、ほっとしたように笑う。
「良かったなー」
「うん。ありがと」
「おかえりー! かんぱーい」
また乾杯。はは、と笑いながらグラスを合わせて、ジュースを飲む。
オレの大学は一番最初にクラス分けをされる。必須の英語や教養の科目は、クラスで受けることになってるから、クラス会とかもあって、それに参加してる皆は結構仲がいい。
良かった、参加してて。
こんな風におかえりって言ってもらえて――嬉しい。
◆◇◆
西条さんから店の近くに来てくれたという連絡が来たので、オレは皆に別れを告げて店を出た。
――二十二時。なんとなくこれが限界かなと自分で勝手に決めたのだけれど。
言われたところに行くと、西条さんが車の外に出て待っていてくれた。
「おかえりなさい、真奈さん」
「あ、すみません」
ドアを開けてくれたところに、乗り込む。すぐに西条さんも運転席に乗り込んだ。
「楽しめましたか?」
「あ、はい。……すごく」
「良かったです」
オレがシートベルトを締めるのを確認してから、車を発進させた。
「……俊輔って、もう帰ってますか?」
なんだかドキドキしながら聞いてみる。
「いえ。すごく遅くなるから寝てていい、なんて私にもおっしゃってましたから。相当遅いと思いますよ」
笑いを含んだ声でそう言われて、ほっとしたような……なんだか違う気持ちも混ざるような。
「……西条さんは、先に寝るんですか?」
「寝ませんね。帰られてから休みます」
「――大変ですね」
なんとなくそう思って、思うまま言ったら、西条さんは少し間をおいてくすっと笑った。
「昔はもっと毎晩のように遅かったので、その頃は少し大変、というか寝不足だったかもしれませんが」
「――」
昔。
……そうなんだ。
まあ確かに、オレがあそこに行ってからも、帰りは大分遅かった。
最近だよね、早く帰ってくるようになったの。
……あ、オレが逃げた時以来、かな。早く帰ってくるようになったの。
それになんの意味があるんだろうと、ちょっと考えるけど。
はっきりした答えはない。
俊輔は今日、誰といるんだろ。
聞きたかったけど、声には出せなかった。
ともだちにシェアしよう!

