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10/29 アメジストセージ
花言葉 家庭的 家族愛
「絶対良い嫁になるよな」
キッチンに立つ後ろ姿に声をかける
「はぁ?急に何言ってんすか。」
呆れたような返事を返すこの男はアパートの隣に住んでいる大学生だ
以前、仕事の飲み会で泥酔して帰ってきて玄関前で寝落ちていたのを介抱してくれたのだが
その時の俺の生活は荒れに荒れていて家事なんてものは一切やっておらず、部屋もゴミ屋敷同然であまりにも酷かった。
それがこいつのお節介魂に火をつけたらしく、以降こうやってうちに上がり込んでは部屋の掃除だったり、食事の準備だったりをしてくれている。あ、もちろん諸々の経費とかは出してるぞ。最初お礼にといって金を渡そうとしたらめちゃくちゃ嫌な顔をされたから経費を少し多めに渡してお釣りは自由に使ってくれと言ってある。
まぁ多分こいつのことだから俺の世話を焼くためのものを揃えたりしてるんだろうけど。その証拠に最近見覚えのないキッチン用品やら掃除用品やらが増えている。
ほんと、家庭的でいいやつすぎる。なんでこんなできたやつがこんなおっさんに構ってるんだか。
「おっさんの相手ばっかりしてると良い出会い逃すぞー?」
「べつに、そういうのいらないし」
よく見なくてもわかるイケメンという部類に入るであろう見た目のこの男のエプロン姿など誰でもキュンとして堕ちてしまいそうなのに
それを見ている相手が俺だからなぁ
「ほんと、勿体無い。家事全般できて料理も上手い男子なんてモテモテだろうに」
俺が女だったらすぐに好きになる自信しかないね。
だって甲斐甲斐しく身の回りのお世話してくれるとか最高じゃん。
「あんたはどうなんだよ」
「はい?」
ことんと出来上がった料理を盛り付けた皿をテーブルに置いてこちらを見つめてくる
「あんたは好きになってくんねーのって聞いてんだけど」
「はぁ?!なっ何を急に!」
「俺、別に家事とかそんなに好きじゃないし、なんなら料理も得意じゃなかったんすよ。」
「いやいやいや!最初から完璧にこなしておられましたけども?!?!」
なんの冗談だ。ていうか、そのイケメンフェイスで近づいてくんな!顎クイってすんなぁぁぁ!!!
「全部、あんたを惚れさせるために頑張ったんすよ?俺なしで生活できなくなるくらいに世話してやろうと思って」
どうっすか?もう俺なしなんて考えられないでしょ?と至近距離でいい笑顔を向けてくる
「うぐ…」
たしかに、もう胃袋も掴まれてるし、こいつなしの生活とか…想像しただけで恐ろしい。ゴミ屋敷再生成する自信しかない。
「ね?もう俺のこと嫁にするしかないっすね」
「あう…」
ぐうの音もでない!知ってたけど!自分がもうすでにこいつなしの生活を考えられなくなってることも、なんなら惚れてしまっていることも
だから、遠ざけようとしたのに
「あんたが俺から逃げられるわけないんで。ていうか、逃すつもりとかさらさらないんで、これからもよろしく、ね、旦那様?」
ちゅっと可愛らしいリップ音をたてて頬にキスされた
「おおおおおおまっ?!?!?!」
「ふはっ顔真っ赤。まぁ、そういうところもかわいいんだけど。」
「かわっ?!」
可愛いとかおっさんにいうこっちゃねーだろ!ていうか、いい加減その顔近づけるのやめてもらっていいかな?!心臓が破裂しそうなんですけども?!
「これから慣れてってくださいね?」
「慣れる気がしない…」
「じゃあ、慣れるまでいーっぱいやらないとっすねぇ」
目の前のニヤついた嫁さん(仮)からの宣告に俺は自分の心臓の平穏を諦めることを決意した。
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