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10/30 ワレモコウ
花言葉 変化 憧れ 明日への期待 など
昨日と今日、今日と明日、毎日は似ているようでよく見ると違っている
それは些細な変化だったり、人生を左右するほどの大きな変化だったりするだろう
僕は今どちらかというとその後者に直面している
「で?これ、君が書いたのか?」
「あ、えっ、な、なぜそのようなことを?」
そう、現在、放課後の図書室にて僕はなぜか憧れの先輩に壁ドンされて迫られているのだ
というかそもそもなんでこうなったのかというと話は随分前に遡るのだが、端的にいうと僕がずっと先輩のことを目で追いかけているのがバレてしまったからだ
図書室から見えるグラウンドで部活をしている姿を眺めるのが僕の放課後の楽しみだった
最初はたまたまだったのだ。元々図書室で本を読んだり勉強したりしていたのだけれど、ある日グラウンドから聞こえてきた声に心を奪われてしまった。すごくタイプの声だった。自分が声フェチだったとは思っていなかったが、男らしくてよく響く声が耳を揺するたびに心地よさを感じたのである。窓際に駆け寄って声の主を探すとそこにいたのが先輩だったというわけ。
それからというもの窓際の席を陣取って聞こえてくる声に耳を傾けて、というか、意識的に先輩のことを見ていたのは否定できない。声だけじゃなく顔もタイプだったんだもん。キモいと思われるかもしれないが頑張ってください、応援してますと書いた手紙を勝手に下駄箱に入れたこともあったなぁ。
そういえば、最近先輩がたまにキョロキョロしてるなぁとは思っていた。誰かを探しているような…
数回目を逸らすタイミングが遅れて目が合いそうになったこともあった
だが、まさか僕のことを探していたとは
今日もいつも通り窓際から先輩を探そうと目を向けたら、すでにこちらを見ていたらしくバッチリ目が合い
「見つけた」と口を動かした先輩が猛ダッシュでここまで来て、逃げる間もなく壁ドンされ、例の手紙を目の前に突きつけられている
「そのノートの字と似てるよね。これ」
「あ、あう、あの…なんといいますか。ほんの出来心というか?」
「やっぱりか」
「えっと、その…すみません。気持ち悪かったですよね。」
「なにが?全然気持ち悪くなんかねーよ」
「え?」
「俺さ、この手紙もらった時、色々うまくいってなくて落ちてたんだ。そんな時にまさかのこんなファンレター貰っちゃって俺のこと見てくれてる人もいるんだって嬉しくてさ。で、そっから吹っ切れて持ち直したってわけ」
だから、お礼が言いたくて探してたとのこと
ちなみに誰かが図書室のあたりから部活しているのをチラチラ見ていることには気がついていたらしい…そんなに視線、うるさかっただろうか…
というか、まさか自分が書いた手紙ごときが役に立っていたとは
嬉しいような恥ずかしいような
「本当にさんきゅな。これからもよければ応援してくれると、その、嬉しい」
少し赤くなった頬を指でかく先輩
「ぼくなんかでよければ」
「ほんとか?!そうだ!よかったら今度の試合見にきてくれよ!」
「え?!」
「なんかさ、君が応援してくれるといいプレーができそうな気がするんだ。」
「行ってもいいんですか?」
何にも関係ない自分が?と思って聞き返したが、俺がきて欲しいから問題ない!と言い張られた
試合してる声も姿もきっとかっこいいんだろうなぁ。見られるものなら見たい…
「じゃあ、お邪魔します…」
「よし!決まりだな!そうだ、連絡先交換しようぜ。試合の日程とか場所とか送りたいしさ」
そう言って開いていたノートにメールアドレスと電話番号を書く先輩
「今スマホ持ってないからさ。あとでメール送っといて、そこから登録する。」
「は、はい。」
「じゃ!俺そろそろ戻らないとだから!絶対連絡してこいよ!!」
そう言ってグラウンドへ戻っていく。背中が見えなくなるまで呆然としていたが、はっと我に帰りスマホを取り出してメモしてくれたアドレスにメールを送る
『よろしくお願いします。部活頑張ってください』
返事に大量のメールが届くまであと数時間
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