134 / 389

落ち穂拾い的な 大神さんのパンツ2

 妙な汗が掌をじっとりと濡らして…… 「……暑そうだねぇ、上着脱いだら?」 「や  すぐに外に出るので大丈夫です」  胸元に手を伸ばしてきた瀬能を避けて身を引くと、三人の訝しむ目がオレを見る。 「えと  畑を見に行かなきゃだし魚も釣りに行かなきゃなので、  えーっと……」  完璧にしくじった!  何も打ち合わせしてないはずなのに三人の動きは連携がとれていて、セキがオレの腰に抱きつき、大神が腕を押さえて、瀬能がコートのボタンを外す。 「ちょ  ちょ   っ」  スカスカして落ち着かなかったのに、体の前面が空気に触れてザワっと鳥肌が立った。 「君、なんで裸なの?」 「下は履いてますよ!」  下は履いているとは言え、裸コートをするなんて思いもよらなかった。  三人に囲まれて逃げ出すこともできず、しおしおと観念して項垂れる。 「雪虫がオレの服着ちゃって返してくれないんですもん。無理矢理脱がすのも可哀想だし」  オレのブカブカの服を着て幸せそうにしているのを見ると、どうにも脱ぐようにとは言えなかった。  可愛いその姿を散々カメラに収めて……雪虫が寝ちゃったからそのまま帰る羽目になったってわけだ。 「だから、平時では裸になるようなことしないでってば」  はぁー……と溜め息を吐きたいのはオレの方だ。  ノーパンに、裸コートに、この一角はどうなってるんだ。 「じゃあ用事は明日でいいよ、僕のところに直接寄ってね」 「分かりました」 「僕の予備のシャツでも着てく? ちゃんとクリーニング出してるよ」 「じゃあお借りします」  コートがあるとは言え、そんな恰好で出歩くのはちょっと……とびくびくしていたところだ。  とは言え、オレのことよりこの二人のことだ。 「さぁセキ、懐の物を返せ」  ちゃっかりポケットにしまっていたらしいセキに大神が詰め寄るが、セキはそっぽを向いて知らん顔をしている。  だがそれで突き通せるほど、大神はセキに甘くないらしい。 「あ゛あ゛────!」 「うるさい。返せ」 「い゛や゛だぁぁぁぁ」 「こんな物どうするんだ!」 「頭に被る」 「    」 「かーぶーる゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛!」  ちょっと会わない間にセキの性癖に新たな物が加わったようだ。  まぁ……オレには関係ないけど。 「しずるもなんか言ってよぉぉぉぉ」 「大神さんの下着の所有権は大神さんだからさぁ」 「大神さんの下着は大神さんの物だけど俺の物でもいいでしょ!」 「良くない」  一言そう返して大神は無理矢理セキから下着を取り返す。  この世の終わりか絶望の極地にいるような顔をして大神に追い縋っているセキを見て、平和だと思った。 END.  

ともだちにシェアしよう!