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落ち穂拾い的な 大神さんのパンツ1

   コートの前を掻き合わせながら、知り合いに出会う前にと研究所の玄関へと急ぐ。  こんな時、この建物の構造は面倒でどうにも腹立たしい。   「────捕まえろ!」    低く響きのいい声が珍しく荒々しく怒鳴った。  ……と、同時にけたたましい音をさせて弾くように開かれた扉から人が飛び出してこちらを睨みつけてくる。  手に、何を……? 「  っそこっ  退いてっ」  怯むことなく全力でこちらに駆け出したセキの形相に戸惑い、「捕まえろ」の言葉を実行するのがわずかに遅れた。  伸ばした手をすり抜け、壁を蹴り上げて見事な跳躍を見せてオレの頭上を飛び越えて行く。 「な  っんだよっ  !」  水谷との訓練で多少はトリッキーな動きに対応できるようになったらしい、反射的に振り上げた手に指先が触れた。  触れれば、それだけで体勢を崩すには十分だ。 「  ぃ」 「あっ   」  もんどり打って倒れるオレの上に落ちてきたセキと、いつもの様子のかけらもない取り乱した様子で駆け寄ってくる大神と。  ってか、セキが重いし、痛い。 「良くやった」  そう言うと大神はセキの手から何かをもぎ取ろうと身を屈める。  俯くといつも整えてある前髪が額に垂れて、色っぽいな なんて思いながら何を取ろうとしているのか見ると、黒い布の塊だった。 「いい加減にしろ」 「いーやーだー」  このカップルは、とりあえずオレの上から退くと言うことを考えるべきだ。 「何を取り合って……」  黒い……これは、下着? 「ヤダヤダヤダ! 大神さんの使用済みパンツ下さい!」 「ふざけるな。返すんだ」 「ヤダヤダヤダ! やっと引っぺがしたのに!」 「返せ」  ってことはこのおっさん、今はノーパンか。 「あの、とりあえず、退いて」  雪虫ならともかく、セキは重い。 「ちょちょちょ  君達ナニやってんの⁉ 警告出てるんだけど!」  駆け寄ってきた瀬能に引き起こしてもらいながら、襟首を掴まれて項垂れるセキに目をやった。  それでもしっかりとパンツを握りしめて離そうとしないところを見ると、よっぽどその使用済みパンツが欲しいらしい。 「セキが人の下着を剥ぎ取るもので」 「それどんな状況よ?」 「や  まぁ  」 「ここで下着脱がないといけないようなことしないでよー」 「   すみません」  素直に謝る大神を見て、問題は解決したらしいのでぎゅっとコートの前を掴んで「じゃあこれで失礼します」と頭を下げた。 「あ、しずるくん、ちょうど良かったよ。ちょっと来てくれる?」 「えっ  あの   今ですか?」 「忙しい?」  ぎゅぎゅ とコートを掴む手に力が籠る。 「そうですね、明日だと  嬉しいです」 「そんな時間かかんないんだけど」  

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