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 それからの拓真の行動は早かった。その日のうちに友達に連絡したようで、土曜日に合コン行くぞ、と翌日学校で聞いた。  そして土曜日。朝、髪の毛をセットしていると母さんに声をかけられた。 「なに。おしゃれしてデートでもいくの?」 「そんな相手いないって知ってるだろ。合コンだよ」 「合コン! なに、高校生で合コンなんて行くの。生意気ねー」 「なんだっていいだろ」 「可愛い子いるといいね」 「いたところでモテないと思うけどな」 「弱気にならないの。強気で行かなきゃ。男でしょうが」 「男とか関係あんのかよ。とにかく邪魔するな」 「母親に対してなんてこと言ってるの。ま、でも合コン行くなら邪魔しないわ。頑張れよ、少年」    茶化してくる母さんを振り切って待ち合わせ場所へと向かう。待ち合わせ場所は最寄りの駅で、今日の合コンの相手の女子たちはここから二駅ほど行った女子校の子たちだった。拓真いわく、女子校の子の方が彼女ができる率が高いらしい。  女の子たちをパッと見た感じ、まぁまぁかな。一人可愛い子はいるけど、後はまぁまぁ。なんて失礼なこと思ってるけど、相手の子たちには俺だってまぁまぁって思われてるだろうけどな。  みんなそろったところで近くのカラオケボックスに移動する。そこでみんな軽く自己紹介をし、男から順に歌っていく。歌っていないものは、歌を聴いてるか、お目当ての人と話してるか。  拓真はと言うと、さっきから同じ女の子とずっと話してる。多分、あの子をロックオンしたんだろうな。  そして、そういう自分はと言うと、特に誰とも話すことなくカラオケを聴いてる。合コンって初めて来たけど、こんなんなんだな。誰かと話さないと彼女なんてできないんだろうけど、誰と話していいのかわからないし、そもそも話したいと思う子がいない。  でも、カラオケってどれくらいいるんだろう。人が歌ってるのを聴いてるだけって結構退屈。涼介とカラオケに来ることあるけど、楽しくていつも時間があっという間に過ぎていくんだけど。それは涼介とだからなのかな? ここに涼介がいたら、どうなるんだろう。なんて、ありえないことを考えたりする。つまり、暇ってやつだ。と、そこで女の子に声をかけられる。今どき珍しい黒髪の綺麗な子だった。 「あの、陽翔くん、だよね?」 「あ、はい」 「良かったらお話しない?」 「俺で良ければ……」 「あ、敬語じゃなくていいよ。同じ年だし。私、結梨花」 「よろしく」 「陽翔くんってこういうの初めて?」 「あ、うん。だから、どうしたらいいかわからなくて」 「そうなんだ。陽翔くん、普通に彼女とかいそうなのに」  彼女、か。涼介のことが好きで、彼女なんて作る暇なかったし、その前にみんなが言うほどモテない。 「俺、モテないし」 「え〜。でも、陽翔くんから告られたら断る子っていないんじゃない?」  そうなのか? それこそ涼介のことが好きだから誰か女の子に告白することなんてなかった。自分から告白してたら違うのかな? でも、涼介を好きなままじゃ誰かに告白することなんてできやしない。やっぱり涼介にふられないとダメなのかな。   「もしかして、告ったことない?」 「ない」 「え〜! もったいない! あ、でもだから今日ここにいるのか。そしたら私ラッキーかも」  なんだか、結梨花ちゃんは一人できゃいきゃいしだした。そのノリについていけない。女の子のこういうノリは正直苦手だ。それでもまだ友達同士ならそうなるのも理解できるけど、一人でもきゃいきゃいするのはどうも……。 「そしたら、私と付き合ってみない?」

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