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 あぁ、そう来るのか。どうしたらいいんだろう。どう答えたらいいのかわからない。 「そんなに固く考えないでいいよ。試しに付き合ってみようよ」  結梨花ちゃんの押しの強さに言葉が出ない。 「私みたいなの、タイプじゃない?」  タイプ? 女の子のタイプか? そんなの知らない。だって、涼介が初恋なんだ。女の子なんて好きになったことがないから、どんな子がタイプなのかそんなの知らない。  え? 何? 何? なんて言えばいいの俺。 「タイプじゃないっぽい? ん〜でもなぁ、私、陽翔くんみたいなタイプ好きなんだよね、可愛くて」  可愛いって……。可愛いってここでもか。でも、可愛い系でも好みって言ってくれる子はいるんだな。なんて、呑気に考えていたら、結梨花ちゃんに手を握られた。ひぃっ!  やめて! やめてってば! どうしたらいいの。どうしたらいいんだよ。手離して傷つけない? え? 大丈夫? 「や〜、ほんとに可愛い! ねぇ、付き合おう?」  えっと……えっと……。えーー。誰か助けて! 拓真、女の子と喋ってないで助けろよ! って心の中で叫んでみたって、拓真はこっち向いてないし、気づくはずもない。ほんとに俺、ピンチ!  なんて焦ってたら鞄の中で携帯が震えたのに気づいた。 「あ、ごめん。電話かかってきちゃった」  電話かどうかなんてわかんないけど、適当にそう言ってボックスを出る。ナイスタイミング!  携帯を見ると、電話ではなくメッセージだった。誰だろうと見ると、今まさに俺が考えていた涼介だった。涼介とメッセージをすることは実は以外と少ない。  話したいことがあるなら、家が近いから電話やメッセージなんかじゃなくて直接会って話すことの方が多い。メッセージにするのは夜遅いときぐらいだ。だから涼介から、こんな昼間にメッセージなんて何かあったのか、と思ってしまう。  メッセージを開くとたった一言だった。  ――合コン行ってるって本当か?  どうして涼介が合コンのこと知ってるんだろう。あ、母さんだな。きっと外で涼介に会って話したんだろう。けど!なんで涼介に合コン来てるなんて言うんだよ。別に悪いことをしてるわけじゃない。でも、なぜだか涼介にだけは知られたくなかった。いや、いつかはバレるのか。母さんもいるし、学校で拓真と話すこともあるし、ということは他の友達にも知られるわけだし。だけど、当日。しかも真っ最中じゃなくてもいいのに、と思ってしまった。きっと次会ったとき何か訊かれるだろうな。  だけど、ちょうどいいタイミングでメッセージが来たので、それは感謝だ。でないとあの場でどうしたらいいのかわからなかった。  彼女を作りたくて来た。それは間違いない。なのに頭の中は涼介でいっぱいだし、こうやってメッセージが来れば動揺もしてしまう。まだ無理ってことなのかな。   ふーっとひとつため息をついてからボックスに戻る。またあの結梨花ちゃんに声をかけられるんだろう、と思うと拓真には悪いけど先に帰らせて貰うことにした。やっぱり今はまだ彼女は無理だ。  ボックスに入り鞄を取ると、案の定結梨花ちゃんが声をかけてきた。 「どうしたの? 帰っちゃうの?」 「あ、うん。ちょっと急用で」 「え。じゃあメッセージID交換しようよ」 「ごめん。急ぐから」  やば。まさかID交換とかありえない。もう断るしかないのに交換なんかしたら自分の首しめるじゃん。  結梨花ちゃんをなんとかかわすとボックスを出て拓真にメッセージをする。  ――ごめん。先に帰る。また学校で  そう送ってからまっすぐ家に帰る。

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