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 そして途中で涼介にメッセージを送る。  ――今帰りだよ  そしたらすぐに既読になる。早いな。でも返信はない。今、打ってる余裕がないのか、直接話すのか。多分、直接話すつもりなんだろうな。でも、涼介相手になんて言えばいいんだ? そのまま言うしかないか。あー、当日にバレるなんて。恨むぞ、母さん。  家の玄関を開けると、見慣れたスニーカーがあった。これ、涼介のじゃん。  直接話すんだろうとは思ってた。思ってたけど、まさか家で待ってるとは思わなかった。だからちょっと怖い。なに言われるんだろう。  リビングを覗くと、母さんが一人テレビを観ていた。あれ? 「涼介くん来てるわよ。あんたの部屋で待ってる」 「うん」  ちょっと待ってくれよ。俺の部屋で待ってるって何?母さんに聞かれたくない話でもするの? え? 何? 怖いんだけど。  部屋のドアを開けると、母さんの言う通り涼介が俺の部屋でいつものように床に座り携帯をいじっていた。飲み物もあるようで、持ってはこなくてもいいみたいだ。とりあえず、鞄を適当に置いて、椅子に座る。 「早かったな」 「まぁ……」 「おばさんが、合コン行ってるって言ってたけど、いい子いなかったのか? こんなに早く帰ってくるなんて」 「まぁ……」 「陽翔なら、合コンなんて行かなくても彼女くらいできるだろ。てか、彼女なんているのかよ」  なんでそんなこと言うかな。俺がモテないの知ってるくせに。 「俺がモテないの知ってるくせに。嫌味かよ」 「嫌味じゃないよ。ほんとにモテないなら、それは見る目がないんだ。陽翔の良さがわからないなんて。って言いたいけど、うちのクラスに陽翔のこといいなって言ってる子いるよ」 「ほんとだといいけどな」 「紹介して欲しい?」  なんだって? 紹介して欲しいかだって? 確かに彼女欲しくて合コン行ったよ。でも、それはお前への想いを昇華させるためであって、どうしても欲しいわけじゃない。って言えたらいいけど、言えるわけがない。ただ、涼介にそんなこと言われたくなかった。他の友だちならまだしも涼介には……。  と思ったところで、花がせり上がってきた。ほら、ダメなんだよ、感情動いちゃ。 「ごめん、ちょっとトイレ」  なんとか吐くのを堪えてトイレで花を吐く。花を吐くのにもすっかり慣れたもんだ。そして、今口から出てきたのは、リナリアだった。花言葉は確か、この恋に気づいて、だ。冗談じゃない。この想いに気づかれたら友達でもいられなくなる。そんなのは絶対に嫌だ。  部屋に戻ると、涼介が何か言いたそうな顔をして俺を見る。 「どうしたんだよ。なんか言いたいなら言えよ。聞くからさ。なにか話したくて来たんだろ?」  そうだ。俺の合コン話しや、彼女の話しなんてどうだっていい。こうやってうちに来るからには、なにか話したいことがあって来ているんだろうから。 「なんだよ。話がなかったら来たらダメなのかよ」 「そんなんじゃないよ。でも、そういう時って彼女といると思ってたから」 「別にいつも一緒にいるわけじゃないよ。なんか友達と遊びに行くからって言ってたな」

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