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 早く終わらないかな。それで涼介に会いたい。それでこの間のこと謝りたい。ひたすら涼介のことを考えて朱莉さんの質問を流す。 「陽翔くんモテるでしょう」 「いや、モテませんよ」  うん、悲しいけどこれは自信持って言える。俺はモテない。 「そうなの? 可愛くていいけど。高校生だと違うのかな?」 「ペットにしたいって言われたことあります」 「あ、わかるー」  ここでもペット扱いになるのか? 俺、人間の男なんだけど! 「小動物系だよね。でもうちらの年から見たら可愛くてモテると思うよー」  小動物系……。可愛いって言われるのなんとかならないのかな。男だから格好いいって言われたいっていうのは贅沢なのかな? 「ねぇねぇ。メッセージID交換しようよ。陽翔くんともっと話してみたい」  いや、俺はもう十分です。とはさすがに言えないよな。でも結梨花ちゃんみたいに付き合おうと言われないだけマシかもしれない。ここで断わったら角立つよな。どうしよう。 「じゃあ、ここはこれまでねー」  という声が聞こえる。やった! 終わりだ。二次会というか、次へ行くっていうのもあるみたいだけど、それは出席しない。 「早く早く!」  いや、早くも何も別に交換しなくても……とはいかないか。  のろのろとスマホを出すとスマホを突き出された。 「これ読み取って」  とQRコードを差し出される。これは交換しない訳にはいかないか。メッセージ来たら適当にかわせばいいか。  言われるがままに朱莉さんのQRコードを読み取る。 「メッセージ送るねぇ」  そういうと友達のところへ行った。良かった! 開放された! 「朱莉さんとID交換したのか?」  拓真が話しかけてくる。 「した」 「陽翔のことロックオンしてたみたいだもんな」 「そういう拓真はどうなんだ?」 「俺もID交換したよ。これで彼女できるかな?」 「拓真なら大丈夫だよ」 「何言ってんだよ。陽翔もだろ」 「俺はいいや。こういうの向かない」  ID交換したばかりで、もうかわすこと考えてるとはさすがにここでは言えない。 「陽翔、この後どうするんだ?」 「涼介のとこ行く。謝りたいから」  結局、自分は合コンに向かないってわかったけど、このためにモメたとか考えたくもない。 「じゃあ早く行けよ」 「うん。ありがとう」  駅で拓真やみんなと別れて足早に改札を通る。  許してくれるかはわからないけど、とにかく謝ろう。だって涼介はそのために彼女とまで別れたんだ。なのに俺は合コンに来て。もう許して貰えないかもしれないけど、それでも謝る。  最寄り駅からは走って涼介の家まで行く。この前のようにインターホンを連打すると、涼介が出てきた。 「この前はごめん!」  涼介の顔をまともに見れなくて、ガバッと頭を下げる。 「入れよ」 「え? いいの?」 「走ってきたんだろ。息あがってる」 「うん。じゃ、お邪魔します」  昨日の今日だから、おっかなびっくりあがる。いつもは気にせずに入るのに。 「何か飲むか?」 「水一口ちょうだい」  そう言ってグラスに一杯水を飲み、呼吸を落ち着かせる。  そして二階の涼介の部屋に行く。

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