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 しかし、ここでも可愛い、か。もう可愛いなんて言われたくないのに。話題を変えようとしたところで拓真が入ってくる。 「陽翔、文化祭でミスコン優勝したんすよ」 「拓真!」  冗談じゃない。あの女装した人生の汚点は知らない人間には知らせたくないんだ。が、朱莉さんは話に食いついてきた。いや、食いつかなくていいから。 「女装したんだぁ。可愛かっただろうね。何着たのー?」 「フリルいっぱいついたミニドレスですよ」 「やだぁ。可愛いぃ」 「拓真! やめろよ」 「えぇ、なんでぇ?いいじゃん」 「恥ずかしいから、ここまでで」 「陽翔は固いんだから。まぁ、でもこの辺までで」 「ざーんねん。でも陽翔くんまじめくん?」 「そんなことないです」 「三年になってからまじめちゃんになったよな」 「受験があったからだろ」  なんで拓真そんなに朱莉さんに情報流すんだよ。もしかしてくっつけようと思ってるとか? いや、それはやめてくれ。 「おれたち推薦貰ったんで、もうあがりだから今日来たんですよ」 「受験生だとそうなるよね〜。うちらもそうだったよ。気狂いそうだった」  なんか拓真が朱莉さんと話してるから、逆に俺は聞き役にまわった。俺の変な話にならなきゃ話しててくれ。俺はこういう喋り方苦手だから、拓真が相手してくれるならそれでいい。  でも気づいてみれば、みんな歌うよりも聴くよりも話してる。  現に今歌ってる人はいるけど、話を聞きながらだし、きちんと聴いてる人もいない。これ、カラオケボックスの意味あんのかな? まぁ、でもファーストフードやファミレスじゃあちょっとアレか。  でも前回もそうだったけど、合コンって疲れるんだな。女の子と話せばいいとはいえ、その子が話しやすい子か、話したい子とは限らないわけで。  そして当然だけど彼氏作りたくて来てるから、がっつき感あるし、朱莉さんみたいにかわい子ぶってる人もいる。そしてわかったのは、俺はそういう子が苦手だってこと。結果、一人ノルこともできずに聞き役にまわることになる。とはいえ、いつまでも聞き役ではいられないだろうなと思い、曲を入れることにした。  好きなバンドの人気タイトル。このバンドが好きな人はここにはいなさそうだけど、どうせ誰も聴いてないからいいだろう。早く終わらないかな。  みんながお喋りに夢中になってる中、俺は一人で歌ってた。カラオケボックスに来てるんだから歌って当然。誰も聴いてなくていい。ただの暇つぶしだから。  と思ったら聴いてる人がいたようだ。それは朱莉さん。 「陽翔くんロック聴くんだ。見た感じのイメージと違うね。口数少ないし。男って感じする」  男だからな。この可愛いと言われる顔でよくそう言われる。  つまらないやつだから。たから今黙ってんじゃん。いつもこうじゃないよ。単にこういう場に慣れてないし、ノリでウェーイができないし、何話していいのかわからないんだよ。  あ、でもこの人の場合、それが良かったのか? それとも顔されあれば中身はどうでも良かった? ロックオンされた場合はどうしたら逃げられるんだ?恋愛オンチだからわからない。拓真助けて! と思うけど、拓真は他のお姉様と話してる。なんだよ、いらない情報は流すのに! 「いや、こういうの慣れてないんで」 「可愛いー。緊張しなくていいんだよ。いつもの感じで話そうよ」  いつもと言われても拓真や涼介と違うんだからそうもいかない。 「普段、あまり女の子と喋らない?」 「いや、そんなことないですけど」  ほんとこういう場になれてないんだよ。俺、合コン向かないみたいだな。ほんとどうしていいのかわからない。

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