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 それからは涼介に会うことなく合コンの日になった。こんなに気まずくなったのは初めてで正直気になる。でも、会ってまた揉めるのは嫌だったから、そのままにした。逆に合コン終わった後の方が普通に話せるかな、と思ったのもある。だから、合コンが終わったら涼介の家に行こうと思ってる。仲直りしたいんだ。  集合場所はうちの最寄り駅から三駅行ったところのターミナル駅。今日の合コンは四対四で相手はひとつ年上の大学一年生のお姉様たち。大学二年生以上のお姉様方だと就職活動などで余裕がなくなるらしく、唯一気楽な大学一年生のお姉様方になったと言う。  大学一年生だと昨年の今頃はまだ俺たちのように制服を着て高校に通っていたから、そこまで萎縮する必要もなさそうだ。  合コン場所は前回と同じくカラオケ。大学生の合コンだとおしゃれなレストランとかになるのかもしれないけど、俺たちはまだ高校生でしかも受験控えてるのもいて、バイトができないメンバーもいる。だから、お姉様方には申し訳ないけど、カラオケで許して貰う。それでもファミレスやファーストフードよりはいいだろう。  カラオケで部屋に入り、各々ドリンクを注文した後は自己紹介をする。男は俺と拓真、拓真の中学時代の友人とその友人の友達の四人。相手のお姉様方はみんな同じ大学で、そのうちの一人が拓真の友人の知り合いだということだ。  お姉様方、というけれど、正直そんなに年上感がない。同級生の女子とあまり変わらない印象。違う点と言えば化粧バッチリ、という点かな? 同級生の女子も化粧はしてるけど、規則もありすっぴんと思っちゃうくらいのメイク(ヌードメイクって言うらしい)だが、大学生ともなると、化粧感バッチリだ。違いと言えばそれくらいで、ノリなんかもさほど変わらない気がする。当然か。昨年はまだ高校生やってたんだもんな。  そして、綺麗な人や可愛い人いるかな? と思ったけど、今回は不発みたいだ。って言ったら失礼かな。普通の人たちだった。いや、そういう自分何様のつもり? って言われちゃいそうだけど。  そんなお姉様方と自己紹介したり、軽いトークなんかをしていても俺の頭の中は涼介でいっぱいだった。 「ねぇねぇ、陽翔くん。陽翔くんって将来何になるの?」  そう声をかけて来たのは、朱莉、と名乗ったウェーブヘアの人だ。爪もデコデコでびっくりしてしまう。 「獣医です」 「えー、すごいー。もう推薦取ったんでしょ? 頭いいんだね」 「そんなことないです」 「塾忙しかった?」 「塾行ってないんで」 「塾行かなかったてすごい! うちら塾通ってたもん」 「はぁ」  別に格好つけに塾行かなかったわけじゃなくて、たまたま十分射程圏内だったから行かなかっただけで、厳しければ塾に行っていた。実際、二年の頃は三年にあがったら塾に行く気だったし。  それよりもこの人の話し方。甘い声で語尾を伸ばせば可愛いと思っているんだろうか? 猫なで声で語尾を伸ばしているのを聞いているとなんだか苛ついてくる。え? まさかこんな話し方を可愛いと思う男はいるのか? 少なくとも自分は苦手だ。普通にハキハキ話してくれたほうが好感持てる。 「彼女いない歴どのくらい?」 「イコール年齢です」  そう言うと朱莉さんはびっくりしていた。 「嘘ー。陽翔くん可愛いのに。いなかったなんて信じられないー」  信じて貰おうがどうしようが、彼女いない歴イコール年齢は嘘じゃない。何しろ中一のときに涼介のことを好きだと気づいたから彼女を作ることはなかった。花吐き病も発症していなかったし、順調に片想いを拗らせてた。

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