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――陽翔は俺のだ
涼介がそう言うのは二度目だ。一度目は俺が熱を出したとき、拓真もいる前でそう言った。
この言葉の意味はなんなんだろう。独占欲だっていうのはわかるけど、なんでそんなに独占欲むき出しにするのかわからない。しかも彼女と別れてまで。そこまでするわけがわからない。
わからないけど、俺が合コン行くのってそんなに悪いことか? そんなに嫌なことか? そう思って思わず母さんに訊いてしまった。
「まぁ、涼介くんも思春期だからね。難しい年頃なのよ」
そう言う母さんはニヤけてるけどなんなんだよ。俺の悩みがそんなに面白いのかよ。そう言いたいけど、言ったって母さんには敵わないの知ってるから言わない。
思春期かぁ。思春期ってそんなに難しいのかな? 俺自身が思春期真っ只中にいるからか、さっぱりわからない。
「俺も難しい年頃?」
「あんたはまたちょっと別」
「なんだよ、別って」
「あ、別でもないのか。同じか」
なんだよ、別って言ってみたり同じって言ってみたり。言ってる意味がさっぱりわからない。考えてわからないから母さんに訊いたのに、なんだか余計にわからなくなった気がする。まぁ、わかったことは涼介と俺がいる思春期ってやつは難しい年頃だということだ。でも、母さんは何か知ってそうだ。
「なんか知ってるだろ」
「知らないわよー」
知らないと言いつつニヤけて見えるのは気のせいか? でも、この様子だといくら訊いても教えてはくれないだろう。だから俺はそれ以上追求するのをやめた。
翌日昼休み。涼介からメッセージが届いた。いつもならクラスに来るのに、メッセージにするなんて珍しいけど、昨日、あんなことがあったからだからだろうな。
メッセージを開くと、
――彼女とは完全に別れたから。好きな子への想いが昇華できるまでは誰とも付き合わない
そう書いてあった。
「どうした?」
「いや、涼介が彼女と別れたって」
「なんでそれを陽翔に言うんだ?」
「昨日、合コンのことで少し言い合いになって。受検の終ってない涼介が彼女いるなら、受検の終わった俺が合コン言ってもいいだろって言ったんだよね」
「それで彼女と別れるって?」
「そう。彼女と別れて誰とも付き合わなかったら合コン行かないか?って言われてさ」
「本気なんだな」
拓真は目を丸くしている。
「だろ? 理由が彼女できたら彼女が優先になるだろうって。で、また陽翔は俺のものだってさ」
「独占欲だな」
「そうなんだよ。妹の里奈ちゃんにはシスコンって感じはないんだけど」
「で、どうする? 人数固めちゃったけど。香川怒るんじゃね?」
「もう怒ってるよ。人数固めてるなら行くよ」
「陽翔も大変な幼馴染み持ったな」
「もう何がなんだかわからないよ」
「まぁ、本気なんだろうな」
「本気って何が?」
「いや、こっちの話」
「変なの」
昨日の母さんといい、拓真と言い何か隠してるっぽいけど、俺にはさっぱりわからない。
まぁ、でも涼介には合コンに行くと言い切ったから行くけどな。
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