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「さ、食べようぜ」  ピザに手を伸ばして言う。今年のピザは贅沢して海老と帆立のピザにした。 「ん〜、美味い!」 「ほんとだ。すごいプリプリしてるな」  贅沢しただけあって、海老も帆立もプリプリでめちゃ美味い。そんな美味いものを涼介と一緒にクリスマスに食べているというのに感動してしまう。これも、俺が意地張って彼女作ってたらできなかったことなんだよな。もし結梨花ちゃんや朱莉さんと付き合っていたら、どんなクリスマスを過ごしていたんだろう。  まぁ、そこそこ楽しいクリスマスは過ごしていたかもしれない。でも、心から楽しめて幸せだと思えるクリスマスは過ごせていなかったと思う。これは涼介とじゃないと無理だ。そして、涼介には悪いけれど、涼介が彼女と別れてなかったらやっぱり叶えることはできなかった。  俺が心から楽しい、幸せだと感じられるのは全て涼介がくれるものだ。他のものではダメで。ほんとに涼介のことが好きなんだな、と実感する。  こうやって思ううちは彼女を作るとか無理なのかもしれない。いつになったら、どうやったら想いを昇華できるんだろう。 「陽翔。難しい顔してるぞ」  涼介に言われて気がつく。今考えることじゃないだろ、俺。今はとにかく涼介と楽しむことだけ考えていればいいんだ。ごちゃごちゃ考えるのは後でいい。 「好きな人のこと考えてた?」 「え?」  なんで急に? 「俺と過ごすより、その人と過ごしたかった?」  違う! 誤解だ! 「違うよ! そんなんじゃない。涼介と過ごしたかったよ。今考えてたのは違う!」 「そう? なんかごめんな」 「涼介が謝ることじゃないだろ。ほんとにそんなんじゃないから誤解するなよな」  いや、誤解されちゃうようなことをしたのは自分だけど。  一緒に過ごしたかったのは涼介で、他の誰かじゃない。他の誰かなんているはずがない。  涼介といるときは涼介のことだけ考えなきゃダメだろ、自分。  そういえば、涼介も好きな子がいるんだった。幼馴染みである自分を優先してくれたけど、ほんとならその子と一緒に過ごしたかっただろうな。片想いだから俺と一緒にすごしてくれただけだ。涼介がその子と付き合ったら、もうこうやって一緒に過ごすこともできなくなるのか。そう思うと寂しいな。 「俺こそごめんな。涼介だって好きな子と過ごしたかったよな」 「そんなことない。俺が一緒に過ごしたいのは陽翔だよ」  俺にも気を使って優しい言葉をかけてくれる涼介はほんとに優しくていい男だと思う。こんな涼介にとって叶わない恋があるなんて理解できない。 「ありがとうな」 「なんで陽翔が礼なんて言うんだよ」 「俺を優先してくれたから」 「陽翔を優先させるのは当たり前だろ」  あぁ、ほんとに優しいなぁ。そんなに優しくされたらもっと好きになっちゃうじゃないか。  ダメだダメだ。あまり考えたら花を吐いちゃう。心配させちゃうから、今は楽しむことだけ考えよう。そう思って今度はチキンに齧り付く。某ファーストフードのチキンだ。 「涼介、チキンも美味いぞ。早く食べないと」 「そうだな」  美味しい料理に大好きな涼介。最高のクリスマスだな。  そういえば、クリスマスを一緒に過ごしたときは大体正月も一緒に過ごしてたけど、今回は入試前だ。どうするんだろう。 「なぁ。正月は休み返上で勉強する感じ?」 「そうだな。冬休みは塾も詰まってるけど、初詣とかは行くよ。逆に行きたい感じ」 「じゃあ初詣一緒に行ける?」 「当たり前だろ。というか陽翔と行く気でいた」 「なんか受験で大変なときに今日も一緒に過ごしてくれてありがとう」 「俺が陽翔と過ごしたかったからいいんだよ。他の日に頑張るし」 「応援してる」 「ありがとう」  こんなに優しい涼介への想いを昇華なんてできるのかなぁ? 余計に好きになっちゃってるんだけど。仕方ないのかな。

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