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クリスマスに口付けを⑧

 ボンヤリ考えていれば智彰に腕を引かれ、ソファーに押し倒されてしまう。その力強さに男を感じてしまい、心が疼く。こんな若いイケメンに相手にしてもらえるだけでも、いいプレゼントだよな……そう考えれば、この状況も悪くはないかもしれない。  でも、お前がやっぱり可愛いから虐めたくなるんだ。 「なぁ、せっかく作った料理が冷めちまう」 「チンすればいいじゃん。もう少しイチャイチャしたい」 「でも、俺腹減ったし」 「あぁ、もう……少しムードとか考えて?」 「あ、……ッ」  少しだけイラついた智彰に両手を押さえつけられて、唇を奪われる。  ヤバい、こういうの好き……。  体が一気に火照り出し、体が切なく痺れる。  素面でなにやってんだよ……と頭の片隅で思いながらも、夢中で智彰のキスを受け止めた。舌を絡ませて唇を吸われて……頭の芯がボーっとしてくる。  そう言えばこいつ俺がファーストキスだったんだよな。上手くなったじゃん。  くだらないことを考えて、少しだけ嫉妬してしまう。  こんなんだから、俺は千歳にフラれたんだよ……ってわかってはいるんだけど。  今頃甘い甘い時間を過ごしているであろうあの2人を思えば、今目の前にいる智彰に甘えたいと思ってしまう。だってこいつは優しいし、かっこいい……。 「いつか俺達の思いが、こんなにボンヤリしたもんじゃなくて、揺らがないものになったら……抱かせてください」 「…………」 「俺の中に、兄貴の面影を探さなくなったら……俺達の関係も変わるかもしれない。こんな傷の舐めあいじゃなくて……きっと、もっと違う……」 「人のことばかりじゃなくて、智彰も水瀬君のことをちゃんと吹っ切れよな?」 「そう、ですね」 「いつか傷の舐めないなんて、しなくて済めばいいのにな」 「はい」  俺達には片方の羽しかない。片方の羽は激しい恋情で焼き尽くされてしまったから……。  これから先、俺と智彰の関係がどう変わっていくのかなんて、誰にもわからない。でも、智彰がいてくれてよかったと思う自分がいる。  深々と降り積もる雪の夜……俺は素敵なプレゼントを手に入れた。  よかった、クリスマスが寂しい思い出にならなくて。 「じゃあ、橘さんの手料理食べましょう」 「まずくても文句言うなよ」 「大丈夫です。今めちゃくちゃ腹が減ってるから」  そう屈託なく笑う智彰に本当に救われる。  心が温かい……。 「智彰、メリークリスマス」 「うん。メリークリスマス!」  【クリスマスに口付けを END】

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