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第2話

 唐突に塞がれた唇。  目の前に覆い被さって俺にキスしてきたのは、見知った後輩で。  俺は訳が分からなくて。 「ふっ……──んんン!?」  名前を呼ぼうと口が半開きになった瞬間を狙って、俺の口にぬるりとしたものが忍び込んできて。それが藤咲の舌だと認識するまで俺は訳が分からなかった。  上顎をなぞられて身体がゾクゾクする。 「ふぁ……ッん…」  舌を吸われ絡め取られる。 「んぅ、ふ、んむぅ……」  また上顎。 「はぁ…あ……ッッん…」  ゾクゾクが止まらない。  こんな状況下なのに。  気持ちいい。  気持ちよくて。  頭がぼぉっとする。  藤咲とのキスがこんなに気持ちいいなんて知らなかった。  身体中まんべんなく快楽の信号がビリビリと伝わって、少しずつ力が入らなくなって。  あ。  また、舌吸われてる。  それヤバい。  ヤバいから。  ダメ。  だめ。  やだ、俺こんな事で──── 「んっ!ッんぁ…っふあぁァァァ〜〜……ッッ!!」  己の意思とは関係なくビクンビクン跳ね続ける身体。  じんわりとした解放感。 「ふふ、可愛い。気持ちよかった?美波さん」 「…………うん……」 「そっかそっか、ならよかった」  もっと聞きたい事や言わなきゃいけないことがあるはずなのに。  全身の力が抜けて身動きが取れない。  長時間のキスのせいもあって頭が上手く働いてくれなくて。  俺はこれからどうなるんだろう?と他人事のように考えてしまっていて。  そんな場合じゃないはずなのに。 「じゃあもっと美波さんのこと気持ちよくしてあげますね?」 「へ?──って、ちょっと何して……!?」  気が付けば。  いつの間にやら藤咲が俺の脚を割って股ぐらに顔を埋めていて、ズボンのベルトに手をかけようとしていたので慌てて声をかける。 「ん?だから。……──キモチイイコト」  藤咲の目が笑っていない。口元はいつも通りのにこやか笑顔なのに、目が据わってる。  体格差や力勝負でなら俺の方が強い。  だからその気になれば、本気で抵抗すれば簡単に逃げられるはずだと思っていたのに。  覇気が違う。  今の藤咲に逆らいでもしたら、命が危うい。そんな覇気。    ……──怖い。  ……──逃げられない。  そう思った。  カチャカチャとベルトを外す音が小気味よく部屋に鳴り響く。  俺は成されるがままだった。 「さっきイッたから下着精液まみれだね。もう必要ないから取っちゃおうか」  ズボンと下着を取り払われて、下半身は何もつけていないまっさらな状態に。  さすがに恥ずかしいので股を閉じると。 「ダメだよ美波さん、閉じたら俺がなんも出来ないでしょ?」  その細い身体のどこにそんな力があるのかと思わせるほど、俺の脚は藤咲の両手でいとも簡単に割られてしまう。  藤咲の目が笑っている。  何がいいのかサッパリ分からないが、今の俺に出来ることは彼の機嫌をとにかく損ねないことだ。 「ふふ。縮こまってる。可愛い」 「…………」  そりゃ素肌で外気に晒されれば股間は萎縮するもんだ。  藤咲の考えている事が判らない。  判らないから。  次に何をしてくるのかの想像ができない。  おとなしくしてれば怖い事はしなさそうだけど……。 「ねえ、美波さん」  名前を呼ばれてハッと我にかえる。 「ココ。触ったこと……ある?」 「??」  ココと言われてもドコなのか分からない。 「何言ってんのか分かんないんだけど」  訝しんだ表情でボソリと呟く。  すると、何故か藤咲の表情がとてもにこやかになっていて。 「そっか、そだよね。普通分かんないですよね」  とても和やかな雰囲気を醸し出しているはずなのに、そんな彼からは異様な執着心が滲み出ているような気がして。  ──身震いがした。  そんな藤咲が笑顔を崩さないまま、こちらへ右手を差し伸べてきて。 「ココだよ、お尻。美波さんのチャームポイントのひとつ。まあるぃお尻」  内股から尻の内側へと、藤咲の細い指がゆっくりと伝い撫ぜる。 「……ッん…」  触り方がなんだかくすぐったくて、ちょっと身体がゆらぐ。 「かぁわいい」  そんな俺の反応が大層お気に召したらしく、藤咲はご機嫌だ。 「ま、いきなり突っ込むわけにはいかないからね。まずは慣らさないとね」 「……??」  右手指がだんだんと上に伸びてきて。 「ふぁア…ッ!?」  藤咲の右手が、俺自身を軽く握った。 「ちょ…ッ!?なん……っ!?」  親指で亀頭をグリグリされながら、揉みしだきつつ上下に擦られる。 「は、っあん!やッだ…ぁ、んふぁ、ぁひィ…んんッ!」 「可愛いよ美波さん。ほら、我慢汁が出てきた」  俺の意思とは裏腹に、鈴口から透明な液体が溢れ出てくる。 「やっだぁ……見んなァァ!!」  液体はあっという間に俺の股間を濡らしていく。藤咲の手が擦れるごとにグチュ、グチャといやらしい水音が嫌でも耳に入る。 「ふふ。美波さんの……おっきくなってきた」  グチュ。  グチュ。  グチャ。  ズチュ。  嫌なのに。    ──気持ちいい……。  嫌なのに。 「ほら。…………イキなよ」  耳元で囁かれたら。   「ふあアァァぁぁ……〜〜ンンッッ!!」  ──もっとシて欲しいだなんて。  口が裂けても言いたくない。  盛大にビクついた身体から放たれた白い液体は、藤咲の右手にビッチリとこびり付いていて。 「あ…っはぁ…っは…ぁ……!!」  必死に肩で息を整えていると。 「美波さん。……キスしましょ」  そう言われるがまま。  俺は再度藤咲に唇を塞がれてしまっていた。  唇を吸われ、舌先を吸われると頭の奥がジンとして何も考えられなくなる。  歯列をなぞられて甘い痺れが背中を伝う。 「んっふぅ…ん、んむ、ふぁ……ぁふ…ん」  気持ちいい……。 「ん、ふぅ…可愛い、美波さん。良い子だからそのまま、力抜いててくださいね?」 「んぁ…藤咲……ぁん、むぅ…」  また塞がれる。  ジンジンする。  気持ちいい。  ボーッとする。    キモチイイ。  ──つぷ。  何かがゆっくりとどこかをこじ開けようとしている。  のに。  身体に力が入らなくて抵抗が出来ない。  なんの痛みもなく。でもナニカが侵攻してくる。 「んんンン!!んぅ、んふぅ!!ンン…ンン!!」  怖い。  のに。  気持ちよさが続いてて。  でも震えが止まらなくて。  訳がわからなくなって。  その感情は涙という形で溢れ出てくる。  侵攻したナニカが内壁を擦り始める。  それがなんだかくすぐったくて。嫌じゃない自分が情けなくて悔しくて涙が止まらない。  何度か擦られる内壁。  いつの間にか厚みを増しているナニカ。  触れられるものは全て優しいのに。  なんでこんなにも怖いんだろう。  俺が。──抗っているから??  快楽に従えば、怖くないのかな?  ……こんな状況で?  悟りでも開けというのか。  馬鹿馬鹿しい。  早く終われ。気が済めば藤咲だって元に戻るさ。  痺れる頭の中でそんな事を考えていた時。 「んァはぁあァァ…!?」  突然とんでもない快楽の波が俺に押し寄せてきた。 「お。やっと見つけた。美波さんのイイトコロ」  俺とキスしている間に藤咲の右手指が俺の肛門にズッポリとおさまっていて。妙な快感はそのナカから来ている事を思い知らされる。 「へぁ…あっ、あんンンや、やだ藤咲何コレ、やんっ、あっや、ダメ、やめてぇッ」 「ココね、前立腺っていって。男でも気持ちよくなれるトコなんですよ?」  藤咲の中指と薬指が熱心にソレを刺激する。  その度に俺の腰は、俺の意思とは関係なく跳ね上がり全身が身震いする。 「やら、やんっや、あ、あっん!あぅ、アァ、アッ、あ、ぁ、あァァァ、や、っだぁ…ッッ!」  嫌なのに。  屈辱なのに。  気持ちいい。  やだ。  やだ。  キモチイイ。  やだ。  やなのに。  ──快感には抗えなくて。 「…も、イッちゃァ…うぅぅ〜〜……ッッ!!」  脚をピンと立て、腰を突き出し痙攣する。  弧を描いた精液は俺の腹に着地した。  息を整える俺の顔を。  彼は穏やかに微笑みながら直視していた。

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