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第5話
適当に食料を買い込んでコンビニから出る。
♪〜〜
何度目の通知だコレ。
深くため息をついて、歩きながら通話に出ることにする。
「はいもしもし」
『ねえ昌也。八雲先輩知らない?』
通知の主は、桜井英明(さくらいひであき)。
俺の同僚の一人だ。
面接時に席が隣同士になって、話がはずみ今では親友と呼べる間柄になっている。
美咲さんとも仲がいい。正直羨ましい。
「いや、知らないけど。どしたの?」
『誰かの落とし物っぽいんだけどさ。もしかしたら八雲先輩のかな?と思って』
ああ。そんな事か。
「嗚呼それなら大丈夫。今日、美波さんはアクセなんも着けてないからさ」
『ねえ昌也』
「何よ」
『なんで昌也が八雲先輩のアクセサリー事情知ってるの?』
「…………あ」
────やられた。
『八雲先輩は?連絡取れないんだけど。今一緒にいるの??』
桜井の怒号が大きくなる。
「いるよいますよ俺んちに居ます。で、俺は今コンビニから帰ってるとこ」
『八雲先輩いるのにコンビニ飯?』
やべ。
美波さんは店レベルの料理が出せるほどの腕前で。コンビニ飯は滅多に食わないらしい。
「ビールだよビール。あの人酒豪だろ?買い置きなくなっちまったのよ」
『まあいいけど。ところで、八雲先輩に危害加えてないでしょうね?』
危害、ねぇ。
「たぶん加えて……ない、よ?」
『なにその間は』
「いや。ちょ〜〜っとだけ大人しくしてもらってるっていうか……」
『酒癖悪かったっけ?』
「まぁ、そんなトコ?」
『ふ〜〜ん……。まさかと思うけど。昌也、流石にさ。まだ……襲ってないよねぇ?』
桜井は非常に頭がよく。妙に鋭いところがある。
スマホの奥から大きなため息が聴こえる。
『はあぁぁ〜〜……まあ、昌也が拗らせてたのは知ってたけどさ』
はぇ!?
「え、マジ?」
『まさかこんな暴挙に出るなんて思わなかったけどさ。どうせ昌也の気持ちが先走りして八雲先輩拉致ったんでしょ?ったくもう……見抜けなかった俺の責任でもあるね』
ホント、敵に回したくねぇなぁこの男は。
『で。八雲先輩をいつ解放するのさ?』
解放かぁ。
「いつだろねぇ」
解放させてくれるのかな。
『あのね昌也。日本の警察を甘く見ちゃってない?』
「それはないよ。もってあと三日ってとこ?」
あ、またため息ついてる。
『……ん、わかった。三日間抑えればいいんだな?』
お?
「ん?桜井??」
『あくまでこれはウチの会社から犯罪者を出したくないだけだからね!あとコレは八雲先輩のため。昌也気付いてる?失踪って八雲先輩のこれからの社会的信用問題にも関わるんだよ?』
「あ、──……そっか」
ずっと閉じ込めておくつもりだったから考えもしなかった。
『ったく。ホントに突発的だったんだね、昌也らしくないよ』
それは。
それだけ俺の想いが破裂しかけてたから。
そんな時にあんなの見ちゃったらさ。
嗚呼、この人の周りには大衆が集まってくるんだって。
そして。
どこまでも。
誰をも魅了していくんだって。
──危険だなって。
『昌也?聞こえてる??』
「ああ、うんごめん。で、何?」
『もう……。だからね、一度でいいから八雲先輩を会社に連れてくること!いい?……そしたら三日間の猶予をあげる』
「えっ?マジで??」
『さっきも言ったけどコレは八雲先輩のためでもあるんだからね。分かった!?』
「……はい…」
『ヨシ。じゃあ俺もう出なきゃだから、またなんかあったら連絡してね、絶対だよ!?』
「解ったってば。……んじゃ」
通話を切ってスマホをしまった頃にはちょうど自宅のマンション前。
どうすっかなぁ……。
俺が捕まるのが先か。
美波さんが折れるのが先か。
入り口の暗証番号を解除してエレベーターに上る。
玄関のドアを開けて、部屋の灯りをつける。
さて。
愛しの美波さんはまだ寝てるかな?
「ただいまぁ〜〜……って、流石に起きてますね」
ベッドの上に気だるげに、なぜか少し呼吸の荒い美波さんと目が合った。
八雲美波。俺の愛しい人。
中性的な雰囲気と醸し出す色気。所作美人ともいわれるほど綺麗な立ち振る舞いが魅力的な一つ上の俺の先輩。
少しウェーブがかった外ハネの黒髪がまた麗しさを際立てている。
「おはよ、美波さん」
キッチンテーブルに買い込んだ袋を置いて、ベッドの上の美波さんの様子を見に行く。
「ふじ…っ…さき……」
俺が近付くたびに身体がビクついてるね。うんうん、そうさせたのは俺だもんね。
美波さんの肢体は無駄のない筋肉と程よい脂肪がマッチした、なんとも中性的な肉感をもちあわせている。
ゆっくりと。美波さんの横たわる肢体の隣に座って、その魅惑的な太ももを撫でる。
スベスベで触り心地のいいモチモチの白い肌。
「ん…っ…」
俺にメチャクチャにされた身体にはもう俺の跡はアレしかなくて。
あの濃密な時間を夢だと思いたくなかったから、どうしても確認したかった。
と思ったら。
──……んん??
俺の知らない跡が出来てて。
あれ、俺。身体拭いたよな??
でも美波さんの太ももには、何故か乾いていない白い液体がベットリと付いている。
え?
もしかして。
……オナったの??
「美波さん、コレ──」
太ももについた精液を手に取り、美波さんの眼前に見せる。
「あっ、違……ッ!!」
「なにが違うの?」
「ぃや、その……」
オロオロしながらも耳まで真っ赤な美波さん。
可愛いなぁ。
可愛い。
食べちゃいたいくらい可愛い。
「——ねえ。どうやってオナニーしたの?」
知りたい。
美波さんのすべてを。
「べ、別にいいだろっ!?」
「やです。……教えて?」
低音で囁くと重圧に負けたのか、あきらかに顔の表情が変わった。
「ふ、太ももを。こすり合わせて……」
「えっ、なにソレ。素股で?」
──見たい。
素股オナニーしてる美波八雲をこの眼で見たい。
「ねえ、俺に見せてください」
「え……ッ!?や、ヤダよ…ッ!!」
美波さんの顔から血の気が引いていく。
──でも。
俺の眼を通じて。
俺が正気じゃない事を察したのか、美波さんの身体の震えがピタリと止まる。
そんな美波さんに近づいて、耳元で吐息多めに囁いてやる。
「──教えて……?」
「ふ…ッん」
吐声とともに美波さんの身体がピクリと震える。
ひとつため息をついて。観念した困った顔つきで、食い入るように俺を見る。
「こ……、こうやって……太ももでチンコ挟んで──あっ、コレじゃ挟めな……!」
あ、そっか。今は萎えてるからか。
んじゃぁ。
美波さん自身を片手でそっと握る。
「ちょ…ッ!!何して……!?」
「勃たせないと再現出来ないでしょ?だからこうやって…」
上下に擦ってやる。
「ふあ…ッ!や、やだ、やめて藤咲ぃィィ…!!」
「おっきくなってきたよ」
あれ。
勃つの早くね?
「はあァァ……っんぁ、あふぁ、や、っだぁ…!」
あっという間にフル勃起する美波さんの肉棒。
先走り液も出てきてめちゃエロい。
「うん、ここまで勃てば出来るよね」
名残惜しいけど美波さん自身から手を離す。
もっと弄ってあげたいけど我慢我慢。
「じゃ、続きをどうぞ?」
「うぅ……。──その……あとは。こう、こすり合わせて……」
勃たせた肉棒が美波さんの柔らかそうな太ももに挟まれていく。
美波さんの太ももがゆっくりと上下に揺れる。
ぬち。
「…ん……ッ」
ぬち。
「ん…っふ……っ」
いやらしい音とともに美波さんが小さく喘ぐ。
その動かし方はとてもいじらしくて。
緊張して縮こまってるのかな?と思うと、なんだか愛らしい。
水音も少しずつ大きくなっていく。
すりゅ。
「ぁ……んッあ」
にちゃ。
「ん、っふ……」
ぬち。
「ひぅ……ぅんンン…!」
白い身体が真っ赤に染まっていく。
ビクビクと震える肢体はとても美しく。
「……ひっ…ぃうぅ……ッふ…っく……ッッ」
鼻をすする音。
ん?
涙声?
おそるおそる声のする方を見てみる。
「ぇ…ちょ、待っ…!──美波さん!?」
美波さんの大きな眼から溢れんばかりの涙がこぼれていて。
悔しげな顔を浮かべながらも、口からは吐息が漏れていて。
それが余計に申し訳なさを感じさせてて。
「えっ、あ、いやそのゴメン美波さん!そんな泣かせ方をさせたい訳じゃなくて……ッ!!」
予想外の展開にこっちが慌ててしまった。
こんな泣き顔を見たいんじゃない。
こうじゃなくて。
「ぉ……俺だって、意味分かんなくて……!!…その、藤咲の事考えたらッ!なんでかチンコでっかくなるし、…ぃ、今だってッ!あの時なかなかイケなかったのに、藤咲がいるから気持ちよくなれてるのワケ分かんないし……ッッ!!」
「へ?」
え、美波さん……なんて言った?
「藤咲が俺の身体おかしくしたんだからなッ!」
もしかして。
「もしかしてだけど。オナった時、俺のこと考えてたの……?」
「そうだよッ!変態になって悪かったな!」
泣きじゃくりながら捨て台詞を吐く。
「へぇ〜〜……」
美波さんが俺のことを妄想してオナニーしてくれた。
これは変え難い事実らしい。
「妄想の俺は美波さんに何したんすか?」
「え……っ?」
美波さんの涙が引っ込む。
「純粋な疑問。だってこんなさ、股こすり合わせてるだけじゃモタついて普通ならイケないでしょ?」
「ぅうぅ……だから…、その……」
「うん」
「耳元で、藤咲の声が聴こえて……」
「へぇ、どんな?」
「えと、だから──」
『──美波さん』
『可愛いですよ、美波さん』
『太ももを俺の手だと思って、もっかい閉じて、擦ってみて?』
『美波さん、気持ちいい?』
『イキたい?』
『よく出来ました。えらいね、美波さん』
「──って……」
真っ赤になってモジモジして俯きながら、その時のことを教えてくれる美波さん。
クッソ可愛い。
ええぇぇなにそのシチュエーション最高じゃん……。
とりあえず妄想先の俺グッジョブ。よくやった。
でだ。
「俺の声を聴きながらだと、イケたんすか?」
「…ぅん……」
コクンと縦に揺れる真っ赤な頭。
え、なにそれ。
「藤咲を使ったのは紛れもない事実だし。だからその、……け、軽蔑してもらって構わないから……」
ちょっと待って。
「いやいや勝手に完結させないでください」
「だって気持ち悪いでしょ?普通」
普通ならね。
「なんで俺が美波さんを軽蔑しなきゃなんないんですか」
普通じゃねえんだわ、この想いはさ。
「それは──」
「こんなに可愛くて愛しくて。大好きな人を、軽蔑なんて出来る訳ないでしょ?」
「え……?」
あ。
美波さんの頭にハテナマークが浮かんでる。
「俺がなんで美波さんにこんな事してると思います?」
「え。ぁ、そういや……な…んで?」
うん素直。美波さんの良いところのひとつだよね。
「それはね。美波さんが俺の事を好きになって欲しいからなんですよ」
目がまんまるの美波さん。
「俺、別に藤咲の事。嫌い…じゃない、よ?」
そっちじゃねえんだわ。それはそれで嬉しいけども。
「ありがと。……──でも」
俺の好きは、貪欲なんだ。
ごめんね美波さん。
こんな俺に愛されて。
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