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第6話
「俺のことを好きになって欲しいからなんですよ」
目の前の男はこう言った。
でも俺は別にその男に嫌気を感じたことがなかったので。
「俺、別に藤咲の事。嫌い…じゃない、よ?」
と反論?した。
その言葉に穏やかな笑みを浮かべながら。
「ありがと」
と、お礼を言いつつ。
「……──でも」
と、俺との距離を縮めようと前のめりになってベッドに片脚を乗せてくる。
「あのね美波さん。普通の好きじゃこんな事しないでしょ?」
……こんな事。
…………コンナコト。
………………。
数時間前の、己の痴態の数々が走馬灯のように頭を巡る。
「……ッッ!!」
耳が熱い。
恥ずかしさで死んでしまいたい。
「あ、顔真っ赤。美波さん可愛い〜〜」
「ぅぅうるさいッッ!!」
「ごめんごめん。でも俺のこと考えてくれてたんですよね、嬉しいなぁ」
あ、笑ってる。
たおやかに微笑む藤咲は美しくて。
ちょっとだけ、見惚れてしまう。
「それに美波さんさ。俺なしじゃイケない身体になっちゃったみたいだし」
え?
違う。
そんなんじゃない。
そんなんじゃない。
違…う……。
「違わないでしょ?……ほら」
「ァあッッ!?」
藤咲の右手が俺自身をやんわりと握る。
「やめて藤咲……」
くちゅ。
わざと、すごく遅緩な速度で。
くちゃ。
指に緩急をつけながら上下に擦られる。
「あ、ァァッ!…あっん…や、だァァ…」
「めっちゃ感じてんじゃん」
分かりたくない。
「あっふ、ぅん…ァ、や、やぁ…ァァ……」
嫌なのに。
もどかしい。
「や、っだぁぁ、もうやぁァァ…ッん…」
嫌なのに。
じれったい。
「嫌なの?しょうがないなぁ」
嫌なのに。
もっと、もっと速く────
パッと。
何事もなかったかのように手離される。
「え……っ?」
手離されて。
放されて。
俺は。
俺は……。
俺は……──
「言わなきゃ、分かんないよ?」
俺は。
「ねえ。……美波さん」
俺は……。
「俺の前でだけ。素直になって?」
耳元で囁かれる甘美な声に。
「ぁ…ァァ……ぁ……」
俺は。
もう────
「ふ…藤咲に触ってもらうと気持ちイィの……ッ!…俺だけじゃ満足出来ないから…お願い……だから…ぁ……ッ」
「俺は美波さんに触ってもイイの?」
「さ、触って…、触って、お願い触って…俺、藤咲に触られたい……!」
生唾を呑む音が聴こえた。
「アッッッんンン!!あぅ!あはあぁァァ!やぅ、やら、きもちぃよぉ…ッッ!」
左手指でナカをかき混ぜられながら乳首を舐められる。
「ふふ、どこもかしこも性感帯ですね」
「言わないでぇぇ……ッ」
恥ずかしくて消えてしまいたいのに。
快楽に抗えない。
「可愛い。俺のえっちな美波さん。すっごく可愛い」
藤咲に痴態を褒められるのがなぜか嬉しい自分がいて。
「俺の……八雲さん」
耳元で囁かれて。
「名前ェェ、やだあぁァァ…んんッ」
名前を呼ばれてゾクゾクして。
「俺に名前呼ばれて興奮してるんだ?可愛いね八雲さん。すっっごく、可愛い。俺の、八雲さん」
吐息めいた藤咲の甘い声が俺の頭を支配する。
俺の身体、やっぱおかしくなってる……。
だって。
だって俺。
「ぁ…ふあァァァぁぁ〜〜……ッッ!!」
藤咲の声だけでイッちゃってる。
「俺の声、そんなに気持ちいいんですか?」
気持ちいい。
気持ちよすぎておかしくなる。
「うん…、きもちぃ、気持ちイイ……っ」
「素直な八雲さん、可愛いね。ほらココもずっとキュンキュン締め付けてくるんですよ?」
左手指が、的確に俺の弱いところを重点的にクチュクチュと律動する。
「あん!あぅ、はあァァァんん、や、ふじさきぃ、ソコすごいからあぁァ!弄んないでぇぇっ!」
また。
クる。
キちゃう……!!
「やッッッああァァァあぁぁァァ〜〜……ッッ!!」
プシャアアァァァ……!!
「お」
無色透明の液体が俺の亀頭から勢いよく噴射される。
「やだ、やだアァァ、なに、これぇ……??」
もうワケが分かんなくて。
混乱した感情が大きな涙となってボロボロとあふれてくる。
「潮吹いちゃうくらい良かったんだ」
「し……お……??」
「うん、すっごく気持ちよくなりましたっていう証みたいな感じ?」
「オシッコじゃ、ないの……?」
「うん、違いますよ。だから安心して、恥ずかしい事じゃないから。……よく出来ました。えらいね美波さん」
褒められた。嬉しい……。
──あ。
顔が近付いてくる。
キス、してくれる……?
「ん…ッぁふ、ぅ、ん…ん、んふ……ぅ…ん…」
耳元に聴こえる口付けの音が心地いい。
藤咲のキス。
きもちいい。
きもちいい。
ゾクゾクする。
キュンキュンする。
今なら分かる。
今の俺の素直な気持ち。
…俺…。
……俺……。
──藤咲の。挿れて欲しいんだ……って。
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