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第1話・生きた屍。(1)
漆黒の闇のベールに包まれた空は、新月ということも相まって深い闇にも似た世界が広がっている。
じっとりとした蒸し暑い空気が一糸も纏っていない肢体に張り付く。
彼は自分を組み敷く男の名を色香を含んだ悩ましげな声を上げて必死に呼び続ける。
彼はけっして意識を奪われないようにと細い腕を伸ばし、広い背中に巻きつけた。それでも彼の意識は与えられる快楽によって奪われそうになる。
男が動くたび、刺激もいっそう強くなり、さらなる快楽を求めて喘ぐ。
その度に寝台も軋みを上げて彼を追い上げていった。
男の下で息乱れる彼は美しかった。
薄闇の中であっても、男には彼の姿が手に取るようにわかる。たとえ一切の光を失う新月という時であっても、手に取るように様子が見渡せた。
彼の金色に輝く絹のような細かい髪が振り乱れ、ルビーを思わぜる真紅の瞳は目いっぱい開かれる。
彼を抱いているのは自分だと、男は快楽の涙を流す彼の華奢な身体を揺らす。
寝台に横たわるしなやかな肢体は、男がもたらした行為で汗がにじみ、輝いていた。その肌は陶器のように白い。
その柔肌には赤い花びらのような跡が無数に散っていた。
自分だけが彼の肌を知っている。
そう感じれば感じるほど、男は強欲になり、彼の全てを支配したくなった。
男は彼の反り上がった陰茎を咥えた。ねっとりとした熱い口内に彼を含み、すべての熱を飲み干さんとばかりに強く吸い上げる。
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