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第4話・悪魔。(2)

 天界と冥界がそれぞれの神であるならば、悪魔は混沌の闇。太陽を嫌い、混沌を好む。  悪魔の彼らが深夜ばかりに活動するのはそういうことだった。  そのことを知っているエイドリアンだからこそ、この地に住み着いたのだ。 「なぜ着いてくる。お前には無理だ、帰れ」 「いいえ、貴方が戻るまでは帰りません」  薄汚い墓地がどこまでも広がるその先で、ふたりは互いに平行線をたどった言い争いを繰り広げていた。  エイドリアンは女神アルテミスから言いつけられ、悪魔を討伐するべくこの地にやって来た。――のだが、彼の傍らにはわからず屋のへそ曲がり。ユーインがいる。  エイドリアンが彼の血液を奪ったため、足元はふらつき、顔面蒼白。今にも倒れそうな状態だ。  にもかかわらず、ユーインがエイドリアンの傍を離れないのは、エイドリアンもまたエネルギーが渇望しているのがわかるからだった。  しかし、それでも血液不足なユーインよりは幾分か動ける。  人間界の悪魔は冥界の者よりずっと軟弱だ。今の力でも悪魔二〇体くらい消滅させるには事足りる。  冥王の子であるエイドリアンにとって、この地に住む悪魔を懲らしめるくらいは造作もないのだ。  エイドリアンたち冥界の住人にとっては、人間界の悪魔は負の感情から生まれたばかりで、力や知能はそれほど持っていない赤ん坊となんら変わらないからだ。  そう言って聞かせているのに、ユーインは未来の花嫁の義兄がよほど心配なのだろう。一向に頷かない。

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