26 / 92

第4話・悪魔。(5)

 前列の悪魔に命中させると、甲高い耳障りな悲鳴を最後に跡形もなく消滅した。  彼に続いて動いたのはユーインだ。  ユーインはピアノ線のような丈夫で細い銀の糸を取り出し、向かい来る悪魔の数匹をぐるりと囲むと勢いよく引っ張った。  悪魔は断末魔の声を上げる暇なく霧散する。  残りの悪魔はわずか数秒で半数にも満たないほどになった。  突然現れた人間の形をした得体の知れない二人にあっという間に追い込まれた悪魔たちは焦った。群れの中から逃げ惑う者たちさえ出てくる始末だ。  人間に恐怖を植え込み、それを食料とする立場の自分たちが、まさか食料に恐怖を与えられているなんてもってのほかだ。  群れを成していた一匹の悪魔は、しっぽを巻いて逃げはじめる同胞に怒りをおぼえた。  それ(・・)は鋭い爪をむき出しにした後、逃げ帰る一匹を標的にすると襲いかかった。  すっかり戦意を喪失している悪魔は、向かい来る同胞への注意が厳かになっていた。だから簡単に同胞の手にかかった。  驚いたのは、まさか同胞に刃を向けられるとは思いもしなかった残党だ。  さらに驚かされたのは、裏切り者が屠った同胞を食しはじめたからだ。しかも一体では事足りず、さらに新たな同胞を葬り食べ始める。  悪魔が食すたび、依然として弱小だった魔力は少しずつ増幅していく。  つまり、仲間を己の血肉と化し、魔力を取り入れた証だった。そのおぞましく異様な光景を目の当たりにしたエイドリアンとユーインは声を失った。

ともだちにシェアしよう!