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第6話・くだらない命乞い。(2)

 精神世界の中へと違和感もなく入ったエイドリアンは彼女の仕掛けに驚きを隠せなかった。  さすがは狩人の女神アルテミスだ。  視覚は肉体世界となんら変わらない。  すべてにおいてつつがない。  これでは悪魔たちが精神世界の中にいることに気づくはずもないのだ。 「人間……。食料みっつしかない。たくさん入るとあの方、言ったのに……」  ここが精神世界だということを知らない悪魔は、エイドリアンたちを視野に入れ不平不満を言い募っていた。  彼ら悪魔の声は老人のように嗄れ、どうにも聞き取りにくい。唸っているようにも聞こえる。  エイドリアンたちは悪魔たちが話したことに度肝を抜かれた。  人間世界で生まれた悪魔は冥界の住人に言わせれば赤子同然の生き物なのだ。だから言葉を理解するはずもなく、ましてや話すなどというのは到底有り得ないことなのだ。  しかし、である。  悪魔らは今、こうして口々に会話し、言語に興味を持っているようだった。  これは明らかな異常であり、やはり世界の生態系が崩れているのだ。  だが、この悪魔たちは人間の負という感情から生まれたばかりで自然と魔力が増幅したとは考えにくい。  裏で糸を引く何者かがなんらかの意図で悪魔らに力を与えた可能性がある。  エイドリアンは剣を構えると、群がっている悪魔らへと斬り込んだ。 「悪魔たちの生態系が崩れている原因も探ってほしい」  擦れ違い様、アルテミスはエイドリアンの耳に囁いた。  両手が鎌の形をした悪魔らはエイドリアンとユーインへと飛びかかる。

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