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第6話・くだらない命乞い。(3)

 一斉に飛び込んでくる悪魔より先に動いたのはユーインだ。  彼は生み出した細い糸を向かい来る悪魔を拘束するとひと息に引っ張り上げる。  ユーインは悪魔たちに断末魔の悲鳴すらも上げさせることなく、闇へ屠った。  その力に驚いたのは悪魔の残党だ。  なにせ彼らはユーインとエイドリアンを人間だと思い込んでいた。それなのに自分たちを簡単に葬り去ったのだ。  このことから察するに、目の前にいる悪魔たちはまだ魔力を嗅ぎ分ける力はなさそうである。  戦う本能はあっても敵が何者であるかを判断する能力はまだ持ち合わせていないようだ。  エイドリアンはユーインの予測し得なかった攻撃に対して悪魔たちが怯んだその瞬間を見逃さない。  いくら言葉を話せたとしても、仲間意識や情が欠乏している輩に何を言っても同じだということは十分に把握していた。  だからエイドリアンは『悪魔らに力を与えたのは誰なのか』などと愚かなことを尋ねる気にはならなかった。  情がない者に情は不要だ。  そう持論を唱えるのがエイドリアンという男だ。  標的をことごとく消滅させるため、一瞬の間に悪魔の目と鼻の先に間合いを詰めた。  手にした剣を地面と平行に振り、彼らを即座に斬り落とす。  あまりにも早い動きに悪魔は逃げることすらままならない。  おそらくまだ未熟な彼らでは目の前で閃光が走ったということしかわからないだろう。エイドリアンの攻撃には無駄がない。  エイドリアンの体術は魔力と共に冥界で冥王ハデスと唯一、互角に競いあえる存在である。その彼と対峙することがどれほど愚かなことなのかを知らない。

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