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第6話・くだらない命乞い。(4)
エイドリアンのたくましい身体からみなぎる魔力は、たとえ古い血液を口にしたとしても、そのおかげで少しは力を発揮できるようになっていた。
汗粒ひとつかくことなく、息遣いも正常だ。
昨夜よりもずっと調子がいいようだ。
それにしても、とユーインは流れるように次々と目の前の敵を蹴散らしていくエイドリアンの姿に見惚れた。
力は冥界に住まう、もっとも凶暴なケンタウロスと互角に戦えるというのに、けれど無駄な筋肉は一切ついていない引き締まった肉体美はしなやかで繊細さも感じる。そして流れるように舞う漆黒の髪はとても艷やかで美しい。
戦うというよりはむしろ舞踏会にでも踊っているかのようにも見える軽い身のこなしに圧倒させられる。
剣を振り下ろすあの力強い腕に抱かれているのだと思えば、官能の声が漏れそうになる。言い知れない優越感がこみ上げる。
悪魔なんてそっちのけで今すぐにでもあのたくましい腕で狂おしいほど強く抱いて欲しいという願望が募っていく。
深いため息をついていたユーインが我に返った頃にはすでに悪魔の数が二匹となっていた。
だが、その一匹も彼の手によってすぐに消滅する。
「た、たすけてくれ……」
残りが自分だけになった悪魔は後ずさり、命乞いをはじめた。
誰であっても命を失うことは怖いのだろう。
「強い。あ、あの方よりも強い……人間界、冥界奪う計画に参加しないか?」
悪魔はエイドリアンを説得しはじめる。
しかし、悪魔は裏切るものだ。
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