2 / 130

月光 第1話

『今夜付き合って。』 それは何の前触れもなく言われた一言だった。 「いきなり・・・どうした?」 携帯を肩に挟みながら苦笑いで聞いてみる。 『いいじゃん。どうせ夜は暇だろ?』 電話の向こうの相手がクククッと笑う。 何か暇って決め付けて話が進んでるのはムカつくが。 実際、忙しい昼に比べて嘘だろ?ってくらい夜はする事がない。 当たってるだけに反論出来ないのが余計悔しい。 「何かあるのか?」 ネクタイを左手で緩めながら窓辺に佇む。 昨日までの雨が嘘のように抜けるような青空を見上げる。 『ちょっと買い物に。20時に迎えに行くよ。』 それだけ言うと悪友は電話を切った。 まったく・・・ 俺は切れた電話を見詰めたまま大きなため息を吐いた。

ともだちにシェアしよう!