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第19話
渡したスポンジが躊躇いがちに背中に当てられる。
そこからゆっくり弧を描くように滑り出す。
背中、肩、項、肩甲骨…
左手を肩に乗せたヒロが優しく俺を洗っていく。
失敗した・・・・・・・・・
見えない分、余計ヒロの存在を感じて心臓が鼓動を早める。
体が火照ってるのは風呂場特有の熱気のせいだけじゃない。
何なんだ?いったい・・・
どうしてこんなに興奮する?
瞼を閉じてまだまだ上がりそうな熱をやり過ごそうとするけど
そんなに簡単に逃げてはくれなかった。
薔薇の浮かんだ浴槽から香る独特の匂い。
滴が大理石に作った小さな水溜まりに跳ねる音。
微かに感じるヒロの吐息。
自ら遮った視界のせいでより一層感じてしまった周囲の状況に思わず大きく息を吐いた。
最近、忙しかったからか?
火照る体を多忙のせいにしてみても
俺だってただの男。
聖人君子じゃないから精神でどうにかしようったってどうにもならない。
今はただヒロがこの火照りに気付かない事だけを願った。
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