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第17話

割れた腹筋から手を下に滑らせる。 孝惟さんの熱をこの手で包もうとした瞬間、大きな手でそれを制された。 「ヒロ・・・もういいから。」 そう言うと孝惟さんはゆっくりと体を離した。 僕・・・何か気に障るような事したかな? 不安が体を支配する。 主人を怒らせる事は決してあってはならない事だと教え込まれた。 気分を害してしまったら最悪またあの薄汚い欲望の渦巻く店に返される。 それだけは嫌だ。 「ごめんなさい・・・ごめん・・・さい。」 謝罪の言葉は不安から来る涙で震えた。 どうしよう・・・ どうしたら孝惟さんは僕を許してくれる? 考えても考えても答えは出なくて、僕は俯いたままただその場に立ち尽くすしかなかった。

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