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第19話

広い浴槽の中。 僕を後ろから包み込むように孝惟さんが抱き締めてお湯に浸かる。 「落ち着いた?」 冷えた肩に顎を乗せて囁く少し低めの声に頷く。 人前で泣いたのなんていつぐらいぶりかな? 前の主人が天に召されたあの日。 あれ以来泣いてなかった。 「ごめん・・・なさい。」 腹部に回された腕に手を添える。 泣いた事も怒らせた事も謝った。 「ヒロ・・・何で謝るんだ?何も悪い事してないのに。」 すぐ真横にある凛々しい顔が僕を覗き込む。 「僕、主・・・孝惟さんを怒らせちゃったから・・・」 俯き呟けば肩に掛かってた孝惟さんの重みが消える。 「俺は怒ってなんかないよ?」 その言葉に顔を上げれば体が反転させられ孝惟さんと向かい合った。 「どうして俺が怒ってると?」 不思議そうに覗き込んむ孝惟さんを真っ直ぐ見つめ返した。

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