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第20話
「・・・さっき・・・」
「さっき?」
「体を・・・」
「・・・・・・・・・」
言葉が続かなくて俯くと孝惟さんがフッと笑ったのを気配で感じた。
「あぁ・・・そんな事、気にしてたのか?あれは・・・ヒロに気付かれたくなかったんだ。」
何を?
瞳だけを上げて孝惟さんを見る。
するとバツの悪そうな顔で僕を抱き寄せた。
「ヒロに・・・その・・・欲情してるのを。」
逞しい胸から響いた言葉に笑みが零れる。
嫌われたんじゃなかったんだ。
そう思っただけで胸の奥がほんのり熱を持つ。
こんな気持ちは初めてで
くすぐったく感じた。
「ヒロ。」
呼ばれて胸の中から顔を上げる。
ぶつかった視線が優しくて体が熱を持つ。
「ヒロはただ俺の側に居てくれたらそれでいい。何かしなきゃとか考えないで。いいね?」
「でも・・・」
僕は“商品”。
孝惟さんは“主人”。
僕の存在意義は『奉仕』することなのに・・・
また不安に襲われて、僕の瞳に涙が溢れた。
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