64 / 130
第3話
颯天の温もりを失った僕はどうしようもない喪失感に襲われて。
自分の意志とは関係なく涙が溢れてた。
颯天に必要とされなくなったら・・・
僕は生きてはいけない。
「世蓮・・・世蓮?」
泣き顔を見られたくなくて颯天に背中を向けたままでいたら、急に視界が揺らいで僕の体はベッドに背中を沈めてた。
さっきまで見てた月は目の前から居なくなり。
代わりに愛しい人の美しい顔が見えた。
「泣くなよ。」
優しい微笑みを零すと僕を翻弄する白い指が頬の涙を拭う。
その手に自分の手を添えて瞼を閉じれば当たり前のように重なる唇。
飴細工のように甘い唇が僕を溶かしていく。
「世蓮。シアを買った理由はね・・・・・・・・・」
ゆっくり瞼を開ければ茶色い瞳とぶつかった。
「世蓮に寂しい想いをさせたくなかったからだよ。」
その言葉に僕は驚く。
颯天の側に居るようになって前みたいに感じなくなった孤独。
昼間、仕事で屋敷を空ける事は確かに多い。
でも夜になれば必ず帰ってきて僕を抱き締めてくれる。
だから1人で過ごす昼間も寂しいなんて感じた事ないのに・・・
どうして寂しいと思うのか理由が分からない僕は月明かりに照らされた颯天を見つめた。
ともだちにシェアしよう!