65 / 130
第4話
「もう少ししたら・・・仕事で帰れる日が少なくなると思うんだ。だから・・・ね?」
僕の疑問に答えるように颯天が優しい瞳のまま話す。
帰って・・・来ない?
その言葉に僕は愕然とした。
こんな広い屋敷に1人だなんて・・・
心の深い深い所に眠ってた記憶が燻り出す。
実際には1人ぼっちにはならない。
執事やメイド、庭師に運転手。
この屋敷にはたくさんの人が居る。
でも・・・・・・・・・。
颯天が側に居ないのなら1人ぼっちも同然。
たくさんの使用人達も何の意味も持たない。
「・・・いやっ・・・」
堪え切れない涙がこめかみに向かって溢れ出す。
「世蓮・・・泣かないで。」
少し困ったように笑うと颯天の唇が零れた涙を拭う。
我が儘だって分かってる。
どんな仕事をしてるかなんて知らないけど、颯天が居なきゃ会社が回らない事くらい十分過ぎる程分かってる。
それでも僕は1人になるのが怖い。
流れる涙を止められなくて泣き続ける僕を颯天は全身で包み込んでくれた。
ともだちにシェアしよう!