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第12話 自信家でも気にする。(最終話)

地底から聞こえる様な声に、真里夜の身体が震える。 「・・・真里夜?今、なんて言った?」 「・・・別れよう。」 「何故?」 トントンと無意識に舘岡の指先がテーブルを叩く。 静かな部屋に、その音だけが響いている。 「・・・。」 何も言えなくなった真里夜は、視線をカップへと下げてしまうと、舘岡が席を立った。 「あっ・・・。」 咄嗟に追いかけようと、真里夜は立ち上がったが、そのまままた座ってしまう。 追ってどうする?だって、オレは・・・。 「はぁ・・・、泣くぐらいなら追ってくれば良いだろ?」 「!!」 「・・・お前が、別れたいって言い出したのは、コレの所為か?」 真里夜の目の前に、病院の名前が入った封筒が差し出される。 「・・・これ・・・。」 「真里夜は、俺の事なんて興味無いから、俺がどんな仕事してるか、知らないよな。」 「・・・そ、それは・・・。興味無い訳じゃ・・・。」 「まぁ、いいけど。」 すっかりと冷めたカップに口付ながら、視線で真里夜に封筒の中を見る様に舘岡が促せば、ゆっくりと中身をとりだした。 見覚えのある病院名は、さっきまで真里夜が居た所だった。 中身は、真里夜の検査結果。 それは、真里夜が医師に告げられた内容と同じ内容が記載されていた。 「・・こ、コレ・・・。どうして・・?」 「どうして? それは、俺のセリフじゃないか?」 「・・・そ、それは・・・。」 「けど、真里夜が俺との子供を欲しがってたとは思わなかったよ。嬉しいな。」 「・・・けど、オレ・・・。」 真里夜の手に力が入る。その手に、舘岡の手が重なる。 「真里夜、俺がお前との子供を産む。」 「・・・えっ?」 「俺が、産む。」 ・・・舘岡が産む? 何を・・・? え・・・????? 「はぁ??えっ・・・???!!な、何で?」 「・・・何で? 俺がお前との子供が欲しいから。お前だって、そうじゃないのか?」 「えッ・・あ、そ・・それは・・・。オレだって・・・。」 欲しい。そう思ったから、だから・・・。 「だから、妊娠薬を使ったんだろ?」 「あぁ・・・、でもオレには合わなかったみたいで・・・、妊娠は難しいって・・・。」 重ねられた手を返し、舘岡の手を握る。 「だから・・・、静の迷惑になる位なら・・・。」 「・・・迷惑って?」 「・・・ユウタが妊娠したって・・・相手はお前なんだろ?」 「・・・なんで、そう思うんだ・・・?」 握られた手に力が入ったのが伝わってくる。 その強さに、掌に指が食い込む。 「真里夜、俺の話を聞いていたか? 俺は、お前との子供を望んでいるんだ。なんでお前の従弟を妊娠させなければいけない?」 「そ、それは・・・。見たんだ・・・。」 「・・・何を?」 「すまない・・・。静の部屋の換気をしようとして・・その・・・写真とユウタの書類を・・・。」 「・・・、ああ。なるほど・・・。」 「そ、それに・・・、最近・・・その・・・」 薄っすらと耳を赤くして俯いた真里夜の顔を舘岡に覗きこまれる。 「うん? 最近なに?」 「セックスの時、服脱いでくれないから・・・オレとは触れあいたくないのかな・・・って・・・。」 「ん、んん??  ・・・あぁ~。」 思わず、顔に手を当てて天を仰ぐ舘岡を、じっと真里夜が悲痛な顔で見る。 言ってしまった。 言わなければ、まだ一緒に入れたかも知れ無いのに・・・。 つぅっと涙が伝い零れる。 「・・・真里夜。ベット行こうか。・・・お前に見て欲しい。」 「・・・何を・・・?」 「俺の身体。」 「・・・え?」 真里夜の涙を拭い、そのまま寝室へと手を取り向かうと、ベットに真里夜を座らせた。 最近の舘岡は、部屋で過ごす時はゆったり目のパーカーを羽織っていた。その中には肌ざわり良いTシャツ。真里夜の記憶の中の舘岡は、制服を着崩しているか鍛えられた綺麗な筋肉質な上裸の姿だった。それが、一緒に暮す様になってからはゆったり目のシルエットやラフな恰好ばかりだった。 パーカーが脱ぎ捨てられ、Tシャツに手を掛けた舘岡が、真里夜の方を見る。 その顔が、いつになく真剣で真里夜も、思わず姿勢を正してしまう。 「・・・? 舘岡、どうかした?」 「・・・はぁ。絶対、笑うなよ・・・。」 「えっ・・・。あ、ああ?」 「・・別に、俺が産む事に後悔は無いんだ・・・。ただ・・・・」 そう言って、Tシャツを脱ぎ捨てた舘岡の身体を見た時、思わず真里夜は息を飲んだ。 「そ・・・それ・・・。」 記憶の中との相違に、思わず目を疑う。 割れた腹筋は、少し膨らみ。少し色の濃くなった乳輪に、ぷっくりとした乳首。 その全てに、真里夜は驚きを隠せなかった。 「だから、言っただろ。俺が産むって。」 「えっ・・・えっ?? そ、それじゃぁ・・・。」 「ああ、お前との子供だ。」 「ほ、本当に・・・?さ、触っても・・・?」 「・・・当たり前だろ。」 そう言って両手を拡げて、真里夜の前に立った舘岡のお腹に手を伸ばす。 ゆっくりと臍の辺りを撫でる。 そこは割れていた筈の腹筋が、少し膨らんでいた。 「まぁ、筋肉の所為でそんなにデカくならないとは言われてるけどな・・・。それでも、ラインが崩れてきたのを、お前に見せるのは恥ずかしかったんだ。」 「だから・・・最近脱がなかったのか・・・。」 「まさか、気にしていたとは・・・思わなかったしな。」 お腹に顔を埋めた真里夜の旋毛に、舘岡がキスを落す。 「で、お前はこれでも別れるか?」 「・・・別れたくない。オレにも、一緒に育てさせて・・・ください。」 「ああ、家族になろうな。」 くぅくぅと隣で眠る真里夜の顔を見ながら、ベットの上で舘岡はノートパソコンを開く。 添付された資料を確認しながら、ベットサイドの引き出さしから、薬を取り出す。 まだ、市場に出回ってない妊娠薬であるソレは、従来の妊娠薬の副作用に悩まされ妊娠を諦めた人達へでも、妊娠出来る様に開発された物だった。 「んん~。」 真里夜の手が、舘岡の腰・・腹回りにのび身体を寄せてきた。 真里夜の頭を撫でると、思わず舘岡に笑みが零れてしまう。 ここまで、長かったな・・・。 やっと、手に入れた。 真里夜・・・。もう、絶対に離さないから・・・。 覚悟しておけよ。

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