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第20話
昼食を終え、二人は大学に戻りそれぞれ別の講義室に移動した。
琉生は席に座って時間が来るまで寝ようと思ったのだが、そんな彼の隣にドサッと勢いよく座った人物が一人。
「美澄、一緒に飯食ってたの誰?」
「……いや、あんたらが誰」
いきなり話しかけてきた知らない男を琉生は無表情のまま見る。
その視線にたじろいた彼らは気まずそうにボソボソ名前を言うと、さっきと同じ質問を繰り返した。
「あれ彼女?」
「は?」
「儚げ美人な子」
「……」
一緒に飯を食っていた儚げ美人な子。
琉生には一人しか思い当たる人物がいなくて、思わず笑いそうになる。
たしかに、佑里斗は儚げで美人だ。中性的な顔をしているし、彼女──女性と見られてもおかしくはないと思う。
「秘密」
「え、秘密って何! 絶対彼女だろ!」
「さあな」
帰ったら佑里斗に話そうか悩んだけれど、きっと本人からすると面白くない内容だろうと思いやめることにした。
「ていうか何で一緒に飯食っただけで彼女になるんだ」
「え、だって美澄楽しそうだったし、いつもは今みたいな無表情なのに笑ってたし」
「……それだけ? それで彼女だとか言ってるわけ?」
楽しければ誰だって笑うだろ。
琉生はジトッとした目を彼に向け、唐突に興味をなくしたかのように顔を背けて机に伏せた。
「あ、おい、美澄」
「寝る」
シャットダウンした琉生は、それにしても周りに指摘される程に笑っていたのかと少し恥ずかしいなと思いながら、佑里斗のことを思い出す。
ちゃんと友達と話せたのだろうか。
少しでも不安が緩和されたらいいのだけれど。
■
一方その頃。
「ごめんね。また時間が合う時に一緒にご飯行きたいな」
「もちろん。ていうか謝んなくていいよ。別に」
佑里斗は気がかりだったことをそうそうに解決しようと、お昼時間から帰ってきた智を掴まえて謝った。
智はキョトン……としたあとにクスクス笑う。
「そんなに気にしなくていいって」
「ぁ……でも、折角誘ってくれたから」
「あはは、また誘うよ」
ホッと息を吐いた佑里斗の背中を智はパシパシと叩いた。
「ちょっと顔色良くなったな」
「あ、本当?」
「うん。よかった」
ワシャワシャ髪を撫でられる。
同級生にそうされるのがなんだか気恥ずかしくて、佑里斗は静かに顔を隠すよう俯いた。
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