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第23話

■  翌日。  佑里斗はいつも通り一人で大学に登校し、講義室に向かう途中で琉生と同じ学年の先輩達が何やら楽しそうに会話している後ろを歩いていた。 「美澄だろ? あいつ呼ぼうぜ。そしたら女子も食いつくって」 「無理だって」  美澄って……確か先輩の苗字だ。  佑里斗は今頃まだ自宅でゆっくり過ごしているであろう琉生のことを思い出す。 「えー? 何で?」 「最近は前に増して付き合いがめちゃくちゃ悪いよ。多分アレは好きなやつがいるね。それか……番にしたいオメガを見つけたとか」 「あ、まじで? そっか、あいつアルファだったな」  佑里斗は彼らの会話を聞いて驚き、足を止めてしまい、後ろを歩いていた学生にぶつかられて転げた。  慌てて謝ったけれど、そんなことより琉生について初めて知ることがあって、それが自分にとっては割と重要なことだったので、逃げるようにトイレに駆け込んだ。  アルファ……先輩って、アルファだったんだ……。  教えてくれなかったことへの驚きか、ショックか。  佑里斗は胸の中がソワソワする感覚に襲われ、フーッと深く息を吐いた。  多分、きっと。  彼はオメガである自分を差別したりしないので、そもそもあまり性別を気にしていないのだろう。 「教えてくれても良かったのに」  けれど果たして初めに性別を教えて貰っていたとして、素直に彼に甘えて今のように一緒に暮らせていたのだろうかと考えると、決して頷けない。  きっと意地になって『大丈夫』を繰り返していただろう。 「……アルファかぁ」  知ってしまった今、彼に対して少し申し訳なく感じた。  きっとこれから先、彼はオメガに出会って恋に落ちる。  いつどこで出会うかもわからないのに、自分のような存在がいたら邪魔でしかない。  それに。 「……オメガって噂、立てられたら嫌だな」  大学ではなるべく、性別がバレないようにしたい。  彼の傍にいる事でオメガだと噂されたら……バレるのも時間の問題である。  佑里斗はトイレで頭を抱えていたのだが、チャイムが流れるとハッとして、慌てて講義室まで走った。

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