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第26話

■  翌朝、フワフワなベッドで目が覚めた佑里斗は、まだ寝起きのポヤポヤした顔で部屋を出る。廊下を歩いて洗面所に行けば、朝の支度を終えて歯磨きをしている琉生がいた。 「おはよーございます……」 「ン」    琉生はうがいをすると顔を上げ、口元をタオルで拭ってチラッと佑里斗を見た。 「はは、お前、寝癖凄いぞ」 「え? わあ……芸術ですね」  佑里斗は鏡を見てフムフム頷く。そんな姿を見た琉生はまた笑いそうになるのを堪えて、ポケットからスマホを取り出した。 「写真撮っていい?」 「ダメ」 「芸術なのに? 残しておきたい」 「からかわないでよ」  軽くペシッと琉生の太腿あたりを叩いた佑里斗は、少し悩んだ後静かに振り返りカメラに向かってピースをした。 「やっぱりこの作品は残しておかなきゃ」 「うん。お前のそういうところ好き」 「!」  何気なく『好き』と言った琉生の言葉に僅かに反応してしまう。  それに気づかない琉生はパシャっと写真を撮ると、画面を佑里斗に見せて「どう?」と聞いた。  よく撮れている。「合格」と笑って言えば、彼は「あざーす」と適当に返事をした。 「俺はあと三十分したら出るけど、一緒に行くか?」 「あ……いや、いいです」  琉生の表情が少し曇る。  なぜなら一緒に暮らし始めてから、二人で登校したことはない。  そんなに自分と一緒にいるところを見られたくないのかと、少し悲しく思えた。   「……ずっと断るじゃん。一緒に行くのそんなに嫌?」 「嫌じゃない! けど……」  佑里斗はモジモジして、ちらりと彼を見上げる。どうやらこの話題からは逃がしてくれなさそうで、観念して口を開いた。 「先輩はアルファでしょ」 「ああ、そうだな」 「……俺、昨日知りました。」 「え、まじ?」  琉生は『伝えてなかったっけ?』と首を傾げる。 「『最近は前に増して付き合いがめちゃくちゃ悪い。好きなやつがいるんじゃないか。番にしたいオメガを見つけたとか』って先輩の同期の人が話してるの聞いた」 「ぁ、えぇ……? そう……」  琉生はギクッとして一歩退いた。  番にしたいとまでは思っていないが、少なからず好意を持っているオメガと一緒に暮らしているので、あながち間違いでは無い……? と思ったからである。   

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