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第34話

 涙が溢れポロッと頬を伝った。  クシャクシャの情けない顔を見られたくなくて俯く。  琉生の手は温かくて、甘えたくなってしまうけれどグッと堪えて唇を噛んだ。 「ずっと頑張ってたんだ、その分幸せになれる」  不意にそんなことを言われ、佑里斗はフッと笑った。 「……そんなことないですよ」 「ある。俺が保証する」  いつもより力の籠った彼の声。 「保証って……何の根拠があってそんな……」 「わからないけど、そうじゃなきゃこれまでの頑張りが報われないだろ」  琉生はそっと佑里斗の肩を掴み、ほんの少しだけ口角を上げる。 ──そんな時だった。  ブワッと甘い香りが、突然佑里斗から漏れ始める。  琉生は目を見開き咄嗟に離れると慌てて抑制剤を飲み、同じように戸惑う佑里斗にも同じものを飲ませた。  佑里斗は力無くペタンと床に座り、両手を着いて荒く呼吸をしている。  どうやら佑里斗の気持ちが沈んでいたのは、発情期の前触れだったようだ。  同じ家にアルファとオメガがいるのは危険だ。それもお互い番持ちではない。  それでも琉生はグッと体の奥底から出てくる欲望を堪えては佑里斗を抱き上げ、そっと部屋に運び、飲み物を用意すると部屋を出る。  そしてドアの前から「薬が効いたら来るから……!」と叫び、フェロモンを嗅いだことで熱を持った体を落ち着けるためにその場を離れた。

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